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国際緊急援助活動の今後

総務部国際課国際協力係長

野口英毅

 

海上保安庁における国際緊急援助活動は、平成3年の湾岸戦争に伴う流出原油の回収のためにサウジアラビアに職員を派遣したのが最初で、その後、平成8年のエジプトビル崩壊、平成9年のシンガポールの油流出、平成11年のトルコ地震、台湾地震の際の国際緊急援助隊に参加している。

外務省では平成11年8月10日に発表した「政府開発援助に関する中期政策」(今後5年程度を念頭に置いた我が国ODAの基本的考え方等を明らかにしたもの)の中で、国際緊急援助活動について「国際緊急援助隊の派遣を含め、今後とも、我が国の治山・治水、地震・津波等の災害対策の経験を活かしつつ、災害時の緊急援助、災害後の復興のための支援及び国土保全・災害防止のための支援を積極的に行っていく。」こととしている。また、1999年のODA白書においても「国際緊急援助隊の派遣は「顔の見える援助」として、これまで高い評価を受けており、また海外で大きな災害が発生した場合の国際協力の新たな形態として、その意義はますます高まっている。」と書かれている。これらのことから、今後、外務省は、災害の発生に伴い国際緊急援助隊の派遣要請があれば積極的に対応していくであろう。

他方、当庁も、平成8年度のエジプトビル崩壊の国際緊急援助隊救助チームに参加したのを始めとして、陸上災害であっても、職員の知識、技術を活用できる場合には、国際緊急援助活動に積極的に参加することとしている。このような状況を考慮すれば、今後、海上保安官が国際緊急援助活動に参加する場面が増えていくかもしれない。

また、国際緊急援助活動は質的にも変化している。これまで、国際緊急援助隊、特に救助チームは派遣すること自体が大きく考えられていた。しかし、国際緊急援助隊が発足し10年がたち、また、昨年度のように自然災害が続き、派遣数も増えてくると反省点も含めた知識・経験が蓄積され、現場での活動も注目されるようになった。例えば、平成8年のエジプトビル崩壊に伴う国際緊急援助隊救助チームが日本を出発したのは、災害の発生後50時間以上経ってからであったが、平成11年のトルコ地震では災害発生後ほぼ24時間で1次隊が、台湾地震では災害発生後12時間以内に先遣隊、16時間ほどで1次隊が日本を出発している。

 

 

 

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