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2. 最近のインドネシア情勢

インドネシアは、97年中期以降の通貨ルピアの下落による経済危機の中、98年5月21日の政変で、約30年間続いたスハルト長期政権に終止符が打たれました。以後、ハビビ政権から現在のアブドゥルラフマン政権の下、経済再編と民主化促進という大きな課題を抱えつつ、新たな時代に向かっているところです。このような中、最近の国内情勢は、経済的には通貨ルピアの下落等厳しい局面が続き、更に治安情勢は、マルク地方を中心とする宗教抗争の激化、分離独立問題の各地への飛び火及び関連する爆弾事件の発生等、極めて流動的となっています。また、スハルト前大統領の不正に絡む裁判等の進捗を背景に、一部の政治勢力が前記の治安情勢に影響を与えているとも言われており、複雑な政治情勢を形成しています。しかしながら、現政権が8月に開催予定の国権の最高機関である国民協議会を旨く乗り切れば、マクロ面では国民のコンセンサスが得られている民主化の促進、ミクロ面では地方分権への移行が推進されるという期待があります。

〔最近、海上保安の面においても宗教抗争のあおりを受けています。去る6月29日、北マルク州での宗教抗争からの避難民290名を含む571名が乗船する客船が北スラウェシ州沖で沈没しました。海軍の艦艇、航空機、警備救難局の巡視船及び民間船舶が救助活動に当たり、11名の乗船者は救助されましたが560名は行方不明となっています。抗争の背景に関しては、「住民は抗争が純粋な宗教対立でなく、外部の人間に仕組まれたものであることを知っている。しかし、相手が攻撃してくるので自分達も戦わなければならない」との報道や、既に2,000名を超える犠牲者と4万人以上の避難民が発生しているという情報もあり、国内治安の確保が火急の事となっています。〕

 

3. インドネシア共和国の海上保安体制

警備救難事案に関しては、海上保安当局、軍、警察等の関係機関が協調して対応し、治安事案に対しては海軍が、救難事案に対しては国家捜索救難庁が調整機関として機能します。灯台業務に関しては運輸省海運総局航行援助局、水路業務に関しては海軍水路部が所掌しています。配属先である運輸省海運総局の組織は、次のとおりです。

 

 

 

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