日本財団 図書館


【国際協力の現場から】

 

インドネシア共和国における海上保安に関する動静

在インドネシアJICA専門家

村田織彦

 

1. はじめに

今年1月、日本からジャカルタに来て半年が経ちました。変わらぬ季節のなかで月日の感覚も薄れ、ふとカレンダーを目で追って今を確かめる生活が続いています。赴任当初は、WELCOME病と称される腹痛に悩まされたり、車が停止する度に手を差出して近寄る道行く人に戸惑いと複雑な思いを交錯させていましたが、数力月を経て体調も整い、この地に馴染んできました。これも赴任前からいろいろお世話になり、また、その後も何かとご支援等いただいている方々によるものと感謝する次第です。

インドネシアはインド洋と太平洋の問に位置する1,700以上の島々からなる世界最大の島嶼国家ですが、古来、海上交易の要衝を占めていたことから、歴史的に様々な文化を受容してきています。宗教は歴史上、現在に至るまで重要な影響を及ぼしていますが、7世紀後半の仏教に始まり、9世紀中半のヒンドゥー教、13世紀末からイスラム教が伝来しています。このような影響もありインドネシアは多様性国家と言われ、300を超える民族集団と250種以上の地方語が混在し、国是としている言葉はビネカ・トゥンガル・イカ(多様性の中の統一)というものです。一方、当地に来てみて最初の意外な印象は、この国が世界最大のイスラム国家であるということです。総人口2億人の約9割がイスラム教徒で、都市部から辺鄙な田舎にまで建立されているモスク(イスラム教寺院)や礼拝所を見たり、毎朝4時に始まるイスラム教寺院からのお祈りの声で目を覚まし、時に排気ガスを避けインドネシアの国花ジャスミンの花咲く静寂なイスラムの墓地を散策したりするうち、このことを実感するようになりました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION