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今後、どのような技術提供や指導をするべきかを検討し、順次実施してゆく予定です。

(3) フィリピンへの電子海図作成技術移転

電子海図はGPS等他の航海計器の情報を集約して表示できるため利便性と安全性に優れており、IHOの技術基準に従った電子海図は2002年に改訂が予定されているSOLAS条約で紙海図と同等であることが認められる方向で検討がすすめられています。東アジアにおける電子海図の整備は日本近海及びマラッカ・シンガポール海峡の整備はほぼ完成しているものの、ちょうどその中間部分、フィリピン海域を含む南シナ海周辺域は全く手が着けられていません。世界の電子海図データベース構築も検討されている中、東アジア地域全体の電子海図の整備が必要となっていますが、フィリピンは国際水路機関決議による自国水域内の発行責任を負った国際海図をまったく製作しておらず、多くの海図がアメリカの測量に基づくものでした。そのため世界で初めて電子海図を作った日本に対して電子海図製作にかかる技術移転の要請がなされました。これに応じて平成11年11月から2名の長期専門家を派遣していますが、この計画を「チーム派遣プロジェクト」として対応することとなり、平成12年6月15日にミニッツが署名され3年間の技術移転が実施されることとなりました。

 

将来の展望

これらの協力援助等は一義的には開発途上国の水路測量技術の向上を目指しており、当部でも着実にその成果が得られたことを確認してきました。また、研修員受け入れ事業に関して言えば、過去研修に参加した人たちの多くが各国水路部等における重職に就いてきているということです。たとえばシンガポール、マレーシアの水路部長は当水路測量コースの修了者でありますし、現職こそ違いますが、過去3代までインドネシアの水路部長も日本で学んでいった方でした。また各国水路部にあっては多くの元研修生が課長をはじめとした要職に就いております。こういった人どうしの繋がりが日本の水路部と各国の国際協同作業等を円滑に進める上で非常に大きな役割を果たしており、研修開始から培われた協力が副次的な効果をもたらしています。

今、水路部では東アジアRENC構想を推進しています。RENCとはRegional ENC Coordinating Centerの略で、地域において電子海図をネットワーク化し共同管理を行うための体制づくりを計画しています。当部ではこの30年以上にわたる国際協力により築いた人的基盤を基に、東アジアの先進国としてその実現に向けて指導力を発揮し、その計画を推進して行きたいと考えています。

 

 

 

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