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それというのは以前、英国の支配下におかれていたため、港湾等の測量から海図の出版まで全てが英国海軍により行われ、国としてそういった組織の必要性がなかったためです。したがって今でも多くの海図が以前に行われた測量をもとにした英国製海図に頼らざるを得ないという状況にあります。ところが、近年モーリシャスの経済は急速に成長し、貿易量の増加に伴い大幅に港湾設備も整備されてきたため、実体と大きく異なる海図が船舶交通に支障をきたしており、更に国連海洋法条約の批准により、沿岸国による船舶の航行に関する安全情報提供の義務づけや、領海・排他的経済水域等の境界を同国は2004年までに国連に登録することの必要性が生じたことなどから、水路部設立が急務となりました。そのため高度な技術力及び豊富な業務経験を持つ日本に対してアドバイザーの派遣が要請され、平成11年10月から水路部設立行政アドバイザーとして前大陸棚調査室長桂氏が派遣されています。現在、同専門家は、近代的な機能を備えた水路部の設立のための協力に取り組んでいます。

(2) フィジー水路測量機材フォローアップ

南太平洋の島国フィジーにとっても海運は重要な交通や物流の手段であり、その航行安全確保にあたり海図の整備が欠かせないところですが、依然として120年以上も前の英国測量成果に基づく海図を利用していました。特に北ラウ諸島海域は、国際的にも主要な船舶交通の要衝であり航海者から最新の正確な海図の整備が求められていました。そのため1993年、フィジー政府は日本に対して海図製作に関する開発調査の要請を行い、1993〜1998年の5カ年計画で北ラウ諸島海域の海図3図を完成させました。

1998年に本開発調査は終了し、最終報告書が提出されましたが、今回の調査では広大なフィジーの経済水域のほんのわずかな場所を測量したにすぎず、大部分が未測量のままであることが指摘されました。そのため今後はフィジー水路部が独自に海図を作成することができるように体制を強化すべきとの提言が明記されて、その具体的内容の調査を実施することになりました。まず、フィジーが保有している古い水深測量機器は、線的測量しかできない非効率的な機器であり、最新の面的測量が可能な音響測深機等の整備が必要とされ、同時にそれを扱える技術者の養成も合わせて実施する計画が立てられることになり、本年4月に水路部から3名の専門家を派遣して現地の実状調査を行いました。

 

 

 

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