おばあちゃの入院
私の見たホスピス
ピースハウスには、よく患者さんのお孫さんがお見舞いにきます。若い生命(いのち)は、平素静かな院内に明るい風をもたらしてくれます。
ボランティアやスタッフとすぐ仲良くなって、学校のこと、お友達のことなど話が弾みます。他の患者さんもお孫さんのことを思われるのでしょう、かわいい受け答えに目を細めていらっしゃいます。
ホスピスの生活を小学四年の女の子の目で綴りました。(この子は小さい時から「おばあちゃ」と呼んでいました)
最初の電話
私は小学校四年生の女の子です。
昨日お母さんがピースハウス病院というところに電話をしているのを聞いてしまいました。ピースハウスはホスピスというところで、そこにはどんな患者さんが入院しているかは、一週間ばかり前、お母さんが話してくれました。
お母さんは、とても緊張して電話をかけていましたが、いろいろお話ししているうちに少し安心したみたいで、電話を切ってから私に言いました。
「こんどの日曜日、お父さんと三人で病院を見に行かない?向こうの人はできれば患者さんもご一緒にって言ってたけど…。家から近いし、とにかく一度見なきゃわからないものね」
入院相談
昨日、お父さんとお母さんと一緒に、ピースハウスという病院にいきました。日曜日だったので、私も一緒に行きました。おばあちゃは、この病院に入院するかもしれない、とお母さんが言っていました。病院につくまで、お父さんもお母さんもいつもより黙っていました。
ピースハウスの周りは緑がいっぱいで、お部屋からもお庭が見えて病院じゃないみたい。高原のホテルのようです。
大きな窓のあるお部屋で、お父さんとお母さんが病院の人たちとおばあちゃの病気のことを話していました。一時間近くも話していました。私は早く帰りたくなってしまったけど、我慢しました。お父さんもお母さんも、少し泣いていました。お父さんが泣いているのは、初めて見たので、びっくりしました。
うちに帰る車の中で、「入院させてもらえることになってよかった」とお父さんとお母さんが言っていました。来週からは、ピースハウスにおばあちゃのお見舞いに行きます。
入院の日
おばあちゃがピースハウスに入院する日が来ました。
ピースハウスの看護婦さんやお医者さんは白衣を着ていません。最初はちょっとびっくりしたけれど、なんだかとてもほっとしました。
縦縞のエプロンをつけた看護婦さんはおばあちゃの横に座って「いちばんつらいことは何ですか」と聞きました。おばあちゃは少し歩くと息が苦しくなって咳が止まらなくなってしまいます。おばあちゃが苦しくならないように、看護婦さんはゆっくりお話をしていました。そして、車椅子でお部屋の外を案内してくれました。おばあちゃは「ここなら静かに過ごせそうね」と気に入ったみたいです。
看護婦さんはお父さんやお母さんとも長いことお話をしていました。お父さんもお母さんも真剣な顔でした。お母さんは、時々泣いているみたいでした。