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このJ. B. Martin 医学部長の年報は実に内容的で、大学がいかに経営されていることが学生にもよくわかるように記されている。

・11時30分〜12時30分:消化器内科主任教授Dr. Chopra (肝臓病の専門家)と学生教育について会談、その後教授回診(Firm Chief Round)と称して、会議室で興味ある症例2例について、ケースレポートの後、学生、レジデントによる討議が教授の下で行われるカンファレンスに出席した。私は循環器を専攻していることを紹介されたあと、私にもいろいろと意見を求められた。Dr. Rabkinは35年もの院長歴の長い方だが、内分泌を専攻した方が久しぶりに臨床医学の討議に参加できたといっておられた。

・12時45分-13時40分:Dr. Rabkinは、プライマリケアと予防医学、臨床疫学の教授夫妻2組と私とをランチに招待され、カンファレンスルームの一つで私的に意見を交わすことができた。

・14時〜15時:D. H.. Makadonと1時間話した。彼はHarvard Medical Internationalといって、国外でハーバードの教育活動をするプロジェクトの責任者である。Prccti-Medといって、今日の新しいプライマリケアに重点をおくPraetical Medicineを10名以上の各科の専門医を国外に送り、引受先の医師会とか学会と共同してまる3日間のセミナーをホテルで行うというプロジェクトである。2000年秋のブラジルで行ったセミナーが大成功であったので、これを日本で行うにはどのようにすべきかという申し入れを受けたわけである。

私は日本の開業医の実情を説明し、日本向きのプログラムでないと成功しないこと、そのスポンサーをどこに依頼するかについてなどの大きな問題があるが、内容がすぐれているので、帰国後立案してみたいと述べた。

・15時〜16時:Dr. B. Roseと会談。彼は“Up-to-Date”と呼ぶ臨床医師が診察中にこのCD-Romを用い、最初の情報を診断や治療に活用する教育的商品を私にディスプレーで見せてくれた。今日、EBMが流行し、証拠のあるデータをインターネットを用いて最新の文献探索をする動きが日本に始まっているが、これは日本の臨床家に非常に向いていることを話し、これを日本語に訳さなくても英語版でそのまま日本に適用されることを話した。Dr. Roseは腎臓病専門医で、水と電解質についての分厚い本の著者である。彼がこのアイディアを1989年から思いつき、まずNephologyから始め、1992年にはCardiology、1997年にはGastro enterlogyをという具合に内容を広め、1999年にはinfectionの章を入れて完成したという。これは3ヵ月ごとに改版し、これには2,600名の専門医が加わり、このプログラムを専任とするものが16名も参加しているという。私はこれを日本の医師に普及するための援助を約束した。

これは病院勤務の医師にも開業医にもEBM的なアプローチとして非常に推薦されるすぐれた内容のものだと思う。この作成にこれほどの人材を用いていることは誠に驚異的である。

・夜:Dr. Rabkinご夫妻と夕食をとりつつ、日米の医学交流をもっと密にする方法につき、いろいろ論議した。

 

3月28日(水)

・7時30分〜8時30分:老年医学のDr.Jeanne Wei教授の回診があり、これに参加した。これにはインターンとレジデントとフェローが3症例を示し、そのあとDr. Weiを中心に論議が行われた。彼女はCardiologyからGerontologyに移り、その近著『Aging Well: The complete guide to physical and emotional health』(Wiley社出版)を私に下さったが、日本のGerontologyのテキストと異なり、非常に全人的なアプローチで、心身・社会面に十分配慮した上での老人のケアを行うという態度でこの本が書かれている。上手に円熟する方法や死の上手な迎え方など日本の老人医学が軽視してきたいくつかの点が強く取り上げられている。

 

 

 

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