日本財団 図書館


海外医療事情調査

北米の臨床医学とその研究ならびに医学プログラムの視察

 

日野原重明

ライフ・プランニング・センター理事長

 

視察の日程

2001年3月26日(月):18時30分成田発、同日20時米国・ボストン空港到着。

 

ボストン

3月27日(火)

・9時〜10時:ハーバード大学関連病院のマサチューセッツ総合病院(MGH)で研究中の堀越勝博士から、米国における臨床心理と医師との診察や研究上の共同作業について実情の説明を受けた。米国では日本と違い、臨床医は細かい心理的アプローチを臨床心理士に委ねていることが特徴であるという。精神科や心身医学科においては、両者の協働態勢がよくつくられている。

・10時〜:ハーバード大学の関連病院ベス・イスラエル・デーコネス・メディカルセンターにあるC. J. Shapiro 医学教育研究センターに責任者のDr. Mitchell Rabkin を訪ね、約1時間、この研究所で扱う医学生やレジデントの教育教材の内容についての説明と、各種のシミュレーターを用いてのデモンストレーションを見せてもらった。

この教材のImmersion Medical社は、“heptics”と呼ばれる装置を用いて、静脈内注射の仕方(肥って前腕の静脈の出にくい例か、容易に静脈が出る例かを選択して試みられる)、内視鏡の用い方、気管支鏡の挿入の仕方、S状結腸直達鏡の使い方を患者を実験台とせずにシミュレーションで技術を修得させるというもので、その操作が簡単であるが、非常に精巧に行われるのを見せられて感心した。そして、米国にはこのような教育的資源を開発するノウハウがあるということ、医師と技師との合同作業による新教育資源の驚<べき作品であることを知った。

“heptics”という言葉はギリシア語のhapticsps (これはgrasp掴む、あるいはperceive会得するという意味をもつ)由来するという。このようにImmersion Medical社の製品を“heptic simulator”と呼ぶとのことであった。

その説明のあと、この研究所内にある学生のための自己学習室の設備を見学した。医学生のためにここまでよく投資していることに驚いた。

Dr. Rabkinは、ハーバード大学医学部の教育や研究のファンドについては44ページにもわたる『Harvard Medical School Dean's Report (2000-2001)』(Martin 学部長)を用意されて、その説明を受けた。

1999-2000の年間予算のうち、13%は学生からの授業料、42%は政府からの収入、19%は一般からの寄付、19%はファンドからの利子収入、7%は雑収入だといわれる。ハーバード大学は私学であるが、いかに政府と民間からの収入が大きいかがわかる。

2000年現在、医学部の在学医学生(MDのストレートの課程)は734名、MD-PhDコース(4年の医学部のコースでなく、3学年の頃、普通の授業は受けずに1年間研究室でリサーチをしてPhDをとり、そのあとに3学年のコースに帰る)の学生は134名、PhD学生は516名、インターン、レジデント、フェローは6,624名、年間の教職は5,603名、選挙権をもっているフルタイムの教官は3,211名の多数に上る。

 

 

 

目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION