Peace House
ホスピスニュース
2001.3 No.178
財団法人ライフ・プランニング・センター
ピースハウスホスピス
〒259-0151 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1000-1
TEL(0465)81-8900(代) FAX(0465)81-5520
たった一日だけの入院
平成11年5月1日。夫が旅立った日です。60歳と2カ月でした。その日は春欄漫、とてもお天気のいい日でした。日ごろは元気で忙しく飛び回っている私ですが、ふと気がつくと夫の写真の前であれこれ話しかけている自分がいます。
病気がだいぶ進み築地のがんセンターに通うのが辛くなってきて、次の病院をどこにするか考えていた時、大磯の我が家から近く環境抜群の素晴らしいピースハウスを紹介していただきました。
院長先生にお目にかかり、じっくり、そしてゆっくり話を聞いていただき、何もかもがとても気に入りました。最後をお願いできるところが決まってホッとしたことを昨日のことのように思い出します。
4カ月あまり、月2回ペースで外来に通いました。幸せなことにピースハウスでの音楽会にも2回出席することができ、十分楽しませていただきました。診察日にはおばあちゃん、愛犬のサブ、私、時には息子も一緒にサンドイッチとコーヒーを持ってピクニックにでも行く気分で出かけました。芝生のお庭での一時は病気を忘れさせてくれるような、そんな穏やかな時間でした。
夫は化学療法をするかどうかで悩みましたが、結局自分の場合は放射線治療のみで「QOL」を大切にしたいと考えました。それは大変な決断でしたが、結果的には正解だったと思います。二人して癌に関する本を何冊も読み、知り合いの肺専門の医師に話を伺い、また上智大学教授のデーケン先生の「死を考える」勉強会にも出席して、自分の考えで進む道を決めました。
病気をしっかり受け止め約2年、仕事も旅行も充分こなし密度の濃い時間を過ごすことができました。それには「痛みは我慢しなくてもよい!」と言ってくださり、適確にお薬を処方してくださった院長先生、薬剤師さん、看護婦さん、皆様のお陰と心から感謝しています。
夫は病気がわかった時、私に「今まで通り、ボランティアもスポーツも趣味のことも続けてくれ」と申しました。お陰で私自身の楽しみも持ちつつ、病気と付き合うことができました。
亡くなる数カ月前、院長先生に自分の残り時間があとどれぐらいあるのか伺ったところ「桜は見られると思いますヨ」と言ってくださったので、桜、桜、桜を求めて毎週出かけました。
京都御室仁和寺の桜を見たのが最後になりました。それは亡くなる1週間前、体はやせ細りましたが精神は最後まで衰えることなく、たった一日だけの入院で天国に旅立ちました。まったく見事な最後でした。
粕谷三佐子
<ピースハウス家族の会会報『悠友』より転載>
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2000年度(2000年4月〜2001年3月)
1月の募金額 106万2,453円
1月の募金件数 9件
2000年度募金総額 2,263万2,828円