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地域医療と福祉のトピックス その37

 

民間病院の半世紀と地域医療

特定医療法人清和会・社会福祉法人全人会 理事長 岩淵國人

 

はじめに

数年前、東京でのことでした。ある高齢化社会についての講演会で、1000人ほどを前にして厚生省の担当課長が「21世紀に入っても十分に医療福祉サービスが供給できる市町村が1%ある。そのひとつが岩手県にある水沢市である」と話されました。サービスを受ける側の水沢市民にとっては、恵まれた医療福祉サービスを享受すべきは当然のことですが、供給過剰の中で我々提供する側は、患者さんや利用者さんから選ばれる施設になろうと懸命に努力しています。厳しかった当会の半世紀の歩みと理念、それに当会に少なからぬ影響を与えてくれた、私が最後のインターン時代を過ごした聖路加国際病院に触れてみたいと思います。

 

医療法人清和会の半世紀と社会福祉法人全人会2年の概要

父憲次郎が、この世から結核をなくしたいという願いから、祖父善治の残した土地に、56床の結核専門病院「常盤木病院」を作りました。その半年後には法人化し、病院名を「ときわ木病院」と変更しています。1951年12月に設立された当社団医療法人は、現存する岩手県内では最も古い医療法人です。しかし、この間少なくとも4回の経営危機にあっています。私は、1995年からの理事長で3代目になります。

一度目の経営危機は1964年、結核患者さんが減少したときで、救急指定を受け、一般病院に変身しました。二度目は1974年の第1次石油危機時で、交通事故患者が激減しました。1975年私が院長として着任し、関野宏先生(仙台社会保険病院腎センター部長、現宏人会理事長)に助けられ、2月から透析をはじめ、6月から「水沢腎センター」を、1977年には一関市に透析サテライト「岩手クリニック一関腎センター」を出しました。三度目は1997年で複数の公的病院が相次いで血液透析をはじめ、コンソールの台数を倍増やした公的病院もあり、水沢の透析患者さんが3分の2の80人近くまで減りました。四度目は医師充足率を100%にするためと、1999年介護保険に対応するため、院内を改装し、ベッド数を減床させた時でした。

昨年3月には特定医療法人に認可され、なんとか生き残れそうな見通しがつきました。

また私たちは1998年7月に社会福祉法人を立ち上げ、父から寄付を受けた土地でデイサービスセンター「フィラン」を開始し、2000年4月からは痴呆対応型高齢者共同生活介護(グループホーム)「コスモス」をはじめました。

 

進取の気性と現在と近未来

救急指定、リハビリテーション、無菌手術室、血液透析、ブラッドアクセス手術、人工ペースメーカー植込、ESWL(対外衝撃波結石破砕術)、病院歯科、腹部大動脈瘤根治手術、移植用死体腎摘出、HLA(ヒト白血球抗原)検査、患者図書館、老人保健施設、デイケア、訪問看護ステーション、E型デイサービス、痴呆型グループホーム、on-line HDF(血液透析濾過)は岩手県南胆江地域医療福祉の先駆けを果たしました。

現在当医療法人の施設は1]病院『岩手クリニック水沢』:内科・外科・透析・泌尿器科・整形外科・麻酔科・リハビリ・眼科・呼吸器科・歯科等(一般病棟46床、療養型病床群93床、介護療養型医療施設17床、血液透析28台)、2]医院『岩手クリニック一関』:外科・内科・整形外科・麻酔科・透析(一般7床、療養型病床群8床、血液透析34台)、3]老人保健施設『清和苑』(一般50床、痴呆棟30床)、4]訪問看護ステーション『ひまわり』、5]居宅介護支援センター『たんぽぽ』があります。

 

 

 

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