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広めたい『新老人』の生き方とは

今の私たちの文明はいきすぎています。1968年に世界の賢人が集まって開かれたローマ会議では「文明には限界がある」というメッセージが発表されました。「質素な生活(simple living)、高い理想(high thinking)」というワーズワースの詩の一節を新老人の生きる哲学として実践し、その生き方を次世代へのメッセージとして残していきたいと思います。

3つの生きがいをもつ

1. いつまでも愛し愛される人間であること(to love)。

2. 創意を持ち続けること。何か新しいことを常に考え、実行すること(be creative)。

3. 苦難に耐えること。耐えることによって他人の苦しみに共感できる心を養うこと(to endure)。

(ヴィクトール・フランクルの言葉より)

 

※ヴィクトール・フランクル

第二次世界大戦中、ナチスのアウシュビッツ強制収容所で厳しい試練に耐えて生還した精神医学者。

 

新老人の会入会者募集

日野原先生の推奨する『新老人の会』では会員募集しています。入会ご希望の方は下記までお問い合わせください。詳細な資料をお送りいたします。

LPC健康教育サービスセンター

『新老人の会』

Tel(03)3265-1907/Fax(03)3265-1909

《年会費》

会員(75歳以上) 1万円

準会員(75歳未満) 1万円

賛助会員 一口3万円

 

New Elder Citizens

新老人の生き方に学ぶ1]

私を必要とする他人がいる喜び

田和久美(73歳)

 

物心ついた頃から自分の人生は、大きく分けて3つの時代と考えてきました。

まず20歳くらいまでは、学校や親、社会からいろいろと教えられる受け身の時代。次はそれらから得た知識を働かせて、受け身ではなく社会から積極的に意欲的に吸収し、また返していくいわゆる壮年期。次の時代は、後から育ってきた若い人たちに座を譲り、静かに自分の来し方を振り返り、反省し、心豊かに平和に暮らせる日々。

しかし、私自身73歳と6カ月という年齢になり、幸いにも大きな病もなく、日常生活に体力、気力、知力を使っても、もう少し他人様にお役に立てる体力などが残っていることを考えますと、最後に、もう1つの時代があるとを思えるこの頃です。長寿国日本となって、70数歳なんてまだまだ若い、100歳まであと30年あることを思いますと、人生は4つに分ける方が正しい分け方だと思うようになりました。70歳より上のひとたちの役割として、若い人たちへの正しい語り部となる義務を感じます。50歳代の知人と話をすると、昭和20年終戦前後の話を聞かせてほしいとよくいわれます。戦中は一億総火の玉となり、「右を向け」といわれたら疑うことなく従った日本人全体が、昭和20年8月15日、終戦のその日をどのように迎えたか。戦中のマインドコントロールがどのようにとけていったのか。進駐軍が街に溢れ、ヤミ市ができ、栄養失調のためか結核が流行し、かっぱらい、万引きが横行したかたわら、少ない物資を隣近所で分け合い、わずかな他人の心づかいがうれしく、物がなくても心までは荒廃していなかったようにおもいます。

それが、経済大国となり、街に物が溢れ、お金さえあればなんでも買えるという物質面が豊かな現代では、それと反比例して心の荒廃につながってきました。

年齢を重ねていくことはよいことでもあり、また老いるという寂しさもあります。しかし、いつまでも感動するというみずみずしい心を保つことで、他人に対するまなざしも柔らかくなり、感謝の毎日を送ることができます。生命には限りがあります。だからこそ健康な今のうちに、もし私を必要としてくれる人たちがいれば何かお役にたてることがあるかもしれない。そう思うその心が、そのものが自分を健康にしてくれる源だと信じています。

 

 

 

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