統合医療(Integrative Medicine)
シアトルのサンフォード医師は臨床麻酔医でありながら、ペインコントロールにモルヒネ等の鎮痛剤や神経ブロックなどの西洋医学手段に加え、ハリを導入しており、マッサージやエネルギー(気)を使った東洋医学的アプローチを研究していると話されました。
バンクーバーではTzu-Chi Instituteという総合代替医療施設を見学しました。ハリ・灸、マッサージ、カイロプラクティック、補助栄養食品類など、数多くの治療が行われていました。その多くは保険が適用されないにもかかわらず、受診者が増えているとのことでした。病院やホスピスなどにおいても、マッサージやヒーリングタッチなどが、ナースたちによって日常的に行われているそうです。
私はこれらの話を聞いて、強い感動を受けました。私は麻酔科での研修の後、九州の老人病院で十数年西洋医学の医者をしてきましたが、慢性疾患や難病の方たちに対して、しばしば無力感や申し訳なさを感じていました。
今、世界は統合医療に向けて、確実に変化しはじめています。私は自分の内に生きる患者さんたちの声を聞いて、自分の果たすべき使命を見つけていこうと思います。
医師 鶴一子
セントポールホスピタルの音楽療法2]
エルサの話
VTRをみながら
エルサはアルツハイマーの老年性痴呆の90歳の女性でした。かたくなに心を閉ざしたまま。それでも近藤さんは彼女に近づき、共有できる場をみつけ誠心誠意、歌を通じてセッションを試みます。
エルサの吐息、脈拍、心拍にあわせて、近藤さんはゆっくりゆっくりとCM7-FM7-の2コードの繰り返しのみで、即興演奏を続けます。優しい表情と歌声はクライエントにとっては最高の魔法です。
VTRの中のエルサを見ながら、私は亡くなった父を思い出しました。末期状態であった父は痛みと闘いながら手術を受けましたが、残念ながらそれは試験開腹術に終わりました。その後、幻覚症状の中のほんの一瞬、訪問看護の方に話す野球の話はじつに穏やかなものでした。3度のご飯よりも野球が好きだった父にとって、野球は生き甲斐でした。生前の父の姿とエルサが重なり、私は涙が止まりませんでした。
身近な人が理解をしない、できないということほど悲しいことはないと思います。人との絆とは、はかりしれないものがあります。
中村紀美