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ADLの低下した患者の退院援助こそが問題で、在宅医療はその分野で大きな役割を果たします。一方、患者が早く自宅に戻りたいと望んでいても、医療スタッフが地域での在宅ケアの現状を認知していない、もしくは理解がなければ実現しません。病院のソーシャルワーカーや医師そして患者、家族が在宅ケアの実態を知ることが大切です。早急な在宅ケアの基盤整備とともに、日本全国に24時間在宅ホームヘルプサービスが急速に普及されているように、医療の面でも24時間在宅対応システムやグループ医療が進むことを望んでいますと話されました。

 

フォーラム

病院から在宅への移行時の問題点とその解決方法

広島YMCA訪問看護ステーションピース所長の馬庭恭子講師は、現場からの報告と看護サマリの活用を提案されました。在院日数の短縮は、患者にとって不安材料でもあります。患者さんの中には「国のヘルスケアシステムの犠牲となって、病院から追い出された」と感じている人も多くいます。また核家族化によって介護を担うマンパワーの不足から、再入院を繰り返すという問題もあります。他にも多くの諸問題を抱えていますが、病院における退院指導の強化と在宅ケアのための情報提供がどこまでできるかが重要になります。また不安材料の1つ1つの要素は、実践者と研究者が共同して研究し発言して、解決にあたっていく努力が必要です。しかしすぐにできることとして、看護職が共同して日本全国の看護サマリを統一し、活用していくことができないかと考えていますと話されました。

聖路加国際病院訪問看護部部長の押川真喜子講師は、病院の中にある訪問看護部としての取り組みをお話しくださいました。特徴的なこととしては、病床回転率が非常に早いことで、これはどんな重症であろうと患者や家族が望めば在宅を可能にしているということです。また病院の全科から在宅の要求が出てくるということもあげられます。私たちは少しでも在宅の可能性があれば早めにそのニーズを知らせてもらい、直接訪問看護部のナースが病棟に面接に行きます。在宅に関わる人が説明しますから、より具体的で、問題点も浮き彫りになります。また病棟と協力してプロトコルや退院指導のためのチェックリスト、分かりやすいパンフレットの作成などもしています。今日は入院前からの退院計画という話も出ていましたが、急な退院の場合には、訪問看護部で退院指導を継続して行うこともしています。

 

シンポジウム

退院から在宅への円滑な連携に必要とされる―教育・技術・システムの変革

小泉俊三講師(佐賀医科大学総合診療部教授)は、臨床医の問題点として在宅ケアヘの非協力を指摘されました。また今の医学生は高度なテクニックを身につけることへ偏りがちですが、患者の総合的な把握やチーム医療、そして医療システムを学習目標にすべきではと提案されました。佐賀医大においては、在学中に在宅ケアの現場に出た学生の80%は達成感を感じ、6年生になってからではなく、もっと早く実習していればより有意義であると思ったという感想も聞かれることも紹介くださいました。

和田講師は、在宅を選んだ家族というのは実は選ばれた家族であり、在宅を希望していてもできない人たちにどう手を差しのべるかということが、在宅に関わるものの大きな課題として残されていると発言されました。

真庭講師は、今訪問看護ナースに求められているものは現場教育であり、さまざまな職種から継続的に学ぶこと、また患者や家族が望んでいることをリサーチし、他の職種に対して発表していかなければならないと提言されました。

押川講師は早急に確立したいシステムの構築について、24時間体制、病棟と他部門の連携、救急救命室との連携、再入院用ベッドの確保、ディスチャージプランナーの育成などをあげられました。また在宅を有効にする手段として、電話相談や在宅試行期間を設けるなどを提案されました。

 

まとめ

最後に日野原先生は「ニーズがなければ変革はありえません。患者はなぜ現状の医療に異議を唱えずにいるのでしょうか。患者は求め、医療者はそれに応えることによってよりよい医療が確立され展開していくことと思います」と医療への一般の方の積極的な参加を呼びかけました。

 

 

 

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