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しばしば失語症などが痴呆と混同されますが、このように脳損傷の臨床像を急性期と慢性期のステージに分け、欠落症状の性状が全体的が限局的かを整理できると、自分はどの部分を見ているかということがわかります。

 

2) せん妄の臨床症状(表2、表3)

せん妄と痴呆はどちらも脳の機能が全体的に崩壊しているわけですから、症状は同じです(表2)。

では、それをどうやって区別するのか、違いがあるのか、それについては表3に掲げました。

プラクティカルには次の4点を鑑別の目安とするのが便宜的だと思っています。1]発症、2]動揺性か、3]可逆性か、4]精神機能の障害の階層性です。この4点を念頭において、痴呆なのかせん妄なのかわからない人を見ていくと、かなり区別できます。

1]の発症という点でいうと、せん妄は、○月○日○時頃というくらい特定することが可能です。それに対して痴呆の場合は、5年前とか、3年前からというように年単位の推定が大半です。

それから2]の動揺性。せん妄の特徴としては外界刺激があると意識レベルは上がります。たとえば大声で呼んだり、痛み刺激を与えると、ハッとする。これは寝ぼけを考えてみればわかります。大声で名前を呼ぶと「はい」といってしばらくはまともな会話ができますが、またスッーと眠りのほうに入ってしまう。このように短い時間の間にも症状に動揺があります。痴呆の場合は、そういう点では一貫性があります。固定した脳の損傷によるからです。

3]可逆性は元に戻るということですが、意識障害はよくなります。

 

 

 

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