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ところが、こういうものがすべてボケと呼ばれ、ボケといわれた人は、痴呆と見なされる。本来、痴呆でないものまでボケといっていながら、いったんボケというレッテルを貼られると、その人は痴呆なんだと一人歩きしていく。この現象は病院などさまざまなところでやたらに見られます。

たとえば夜間せん妄で、失禁したり、夜中に興奮して騒いだというと、あの人はボケたという言い方をします。また、白内障の術後にせん妄状態が出るということは通例なのですが、それもボケたといわれる。

ボケといったのでは、せん妄なのか、妄想なのかはわからないわけです。せん妄ならば、その原因を取り除き、治療する必要がある。妄想やうつ状態ならその背景に目を注ぎながら、それぞれに対する治療が可能です。ですから、きちんと状態像を把握して具体的に表現すべきです。高齢者の医療や福祉の現場ではボケという言葉は使ってはいけない。そういうようにはっきり言ってもいい。

しばしばせん妄なのかうつなのか区別が非常にむずかしい場合があります。区別ができないときはそのままの行動をきちんととらえることが大事です。ボケという言葉を使ってしまうと、本当に見えなくなってしまいます。そういう言葉を使うということは高齢者に対する認識のレベルが貧しいといってもいいでしょう。本来、医学用語として「ボケ」というのはないのです。

 

2) 症状や異常の背景をみる

弄便

異常行動も痴呆がある人では痴呆の症状と見なされることが多いのですが、それもちょっと立ち止まって考える必要があります。

 

 

 

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