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私たち精神科医が毎週土曜日に痴呆の医療相談をする取り組みを十数年やっていますが、これは家族の方に来てもらい、診断とか、介護上こういう問題があるとか、身体疾患があるといった問題を1ケース1時間で受けています。

まずケースワーカーが電話で受け付けて、相談内容を聞きます。「家ではみられないから入院させてほしい」というのは医療相談の問題ではないので、まず入り口でフィルターをかけます。こうして医療相談の対象と判断したケースの相談を受けていますが、統計をとってみると、痴呆の医療相談ということで電話をかけてきて、しかもケースワーカーがフィルターをかけたにもかかわらず、約3分の1が非痴呆性の問題なのです。

これをみていて面白いと思うのは、世の中でボケといっているのは、痴呆でない問題も含まれているのに、いったんボケているというレッテルを貼られると痴呆と見なされてしまうことです。

 

高齢者にボケはない

ボケといわれることはどんなことかを詳しくみてみると、痴呆とせん妄状態のほかに、妄想、うつ状態、心気症や強迫といわれる神経症圏の問題、高度な異常行動や家族内のけんかなどさまざまです。

いまいいました症状をもう少し精神医学的に区分けすると、痴呆とせん妄は脳の症状、妄想は観念の異常、抑うつは感情の異常(気分障害)です。それから心気症状とか強迫は神経症として病気にくくることもできますし、性格的な問題ということもできます。要するに精神病をすべて網羅しているわけです。

 

 

 

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