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3) アルツハイマー病とその他の痴呆性疾患(表1)

高齢社会の特徴

痴呆という言葉が非常に気軽に使われていますが、痴呆とは症状であって、病名ではない。熱が出たとか、お腹が痛いというのと同じで、痴呆はさまざまな脳の疾患で生じる病的な機能の障害です。どんな病気で生じるかは表1に掲げました。そのなかで高齢者における痴呆性疾患の約9割はアルツハイマー病と血管性痴呆です。残りのさまざまの痴呆性疾患はその他の10%の中に含まれます。そして、アルツハイマー病は人類にとって最大のテーマの一つになっているのはみなさんもご存知のとおりです。とくに65歳以上の人口が全人口の14%以上を占める高齢社会の中核は80歳代、90歳代の人口増加ですが、その年代に痴呆が多いということに目を向ける必要があります。65歳以上の痴呆の出現率は5〜7%ですが、年齢階層別にみていくと、60歳代の痴呆の出現率は1%未満です。それが80歳代以上になると20〜25%、4人か5人に1人が痴呆ということです。高齢社会の大きな問題が痴呆であるといういうのは、このような数字が背景にあります。

もう一つ付け加えると、日本とヨーロッパとでは、アルツハイマー病と血管性痴呆の比率が、かつてはヨーロッパでは3:1で、日本では1:2か3だといわれていたのが、この10年くらいのうちに急速にその差が縮まって1:1もしくは逆転して2:1だという人もいるようになりました。とりわけ病院や特養では、精神症状や異常行動のために入る人が多いので、アルツハイマー病のほうが圧倒的に多い。

端的にいえば、脳梗塞とか脳出血による血管性痴呆は、年齢では70歳代前半までが多く、アルツハイマー病は75歳以上が多い。

 

 

 

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