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そうするといろいろな場面で双方が入り交じりながら生きた反応を起こしていることが見えてきます。

 

2) 要素的な障害と全体的な障害

無意昧な数値化

しばしばいまの医療や福祉の現場では、老人を見ると「生年月日はいつか」とか、「住所はどこか」「総理大臣は誰か」というようなテストをします。テストをすると痴呆がわかるように思っていますけれども、実は私たちは痴呆の人と相対するとすぐにわかる。痴呆の軽い人でも5分くらい話しているとおかしいと気づきます。要するに痴呆かどうかは全体像で判断しているのです。そういうわけで痴呆がない人にはテストはほとんどしません。する必要がないからです。痴呆があると思う人にテストをしているわけです。

痴呆というのは全体的な障害ですが、それを具体的に把握しようとすると、記憶力はどうなのか、見当識はどうなのかというように、要素に分解して、その点数を総計して評価します。ところが、痴呆のスケールは何を基準にしているのかといえば、直観によっているのです。自分たちの思っている痴呆のレベルにテストの点数がどれくらい合うかを見て、合致していれば標準化したといわれるのです。ではどうしてテストが必要なのかといえば、客観的に数値化できる、誰がやっても一応はわかるという便宜的な目的のためです。テストを用いる場合にはこのようなことを認識していて下さい。

ついでにいっておけば、高齢者に対するテストは目に余ります。たとえば、風邪をひいたりお腹が痛いので病院に行ったら総理大臣の名前を聞かれたりする。

 

 

 

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