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別紙(4)-2

 

定期コンテナ船による二酸化炭素観測

気象庁 気候・海洋気象部 海洋課 汚染分析センター 小川完

 

はじめに

地球温暖化は人類が直面している地球環境問題のひとつとして、社会的に大きな関心を集めています。これは化石燃料の消費や森林の伐採などの人間活動によって、大気中で二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが増加することにより、地上付近の気温が上昇する現象を指しています。

海洋は大気中の50倍もの二酸化炭素を含んでおり、海面を通して大気との間で二酸化炭素の吸収・放出を行っています。これまでの研究によると、人間活動により放出された二酸化炭素のうち、大気中に残るのは半分程度で、約3割は海洋に吸収されていると言われています。しかし、海洋が吸収しているとされる二酸化炭素の量は、研究者によって大きな隔たりがあります。それは、海域や季節によって、ある海域では吸収し、別の海域では放出しているなど、海洋が一様に大気から二酸化炭素を吸収しているわけではないのです。このため海洋全体での吸収量の見積もりが困難なのです。

大気中二酸化炭素が増加することによる気温上昇や、これに伴う海面水位の変動、降水量の変化などの気候変動を精度良く予測するためには、大気と海洋との間の二酸化炭素交換量の見積もりを、季節変化を含めて全ての海域で正確に求めなければなりません。大気と海洋間の二酸化炭素の交換量は、表面海水と海上大気の二酸化炭素濃度の差(正確には二酸化炭素分圧差)、海面水温、海上風速の3つの要素でほぼ決まっています。つまり、広い海域においてこれらの要素の観測を高頻度で行うことが、気候変動の正確な見積もりには必要となります。

近年人工衛星からのリモートセンシングにより、海面水温や海上風は全海洋規模で観測することが可能となっています。しかし、海水の二酸化炭素を遠隔測定するセンサーはまだ開発されていません。つまり、海水の二酸化炭素濃度を観測するためには、現場での測定あるいは試料を陸上に持ち帰っての測定が必要となります。観測を専門とする海洋観測船は高い精度で海面から深層にわたる観測を行うことができますが、その数は少なく全海洋に渡って、しかも頻繁に繰り返して観測することはできません。

このようななかで、海洋表面の二酸化炭素モニタリングを行う方法として、一般船舶の協力による観測が有力な手段として期待されています。特に、大洋を横断する定期航路で運航している商船での観測は、広い海域を繰り返し、また長期間にわたって行うことができるため、このモニタリングに最適と言えます。

 

定期コンテナ船による二酸化炭素観測

ここでは、交通エコロジー・モビリティ財団が日本財団の補助金により、北太平洋を横断する定期コンテナ船の協力を得て行っている二酸化炭素観測について紹介します。

観測に協力いただく商船については、北太平洋を横断する航路で定期的に運航され、観測装置の設置スペースを確保でき、さらに観測技術者1名の便乗が可能であることなどの条件を満たすことが必要です。(社)日本海難防止協会を通じて、大阪商船三井船舶株式会社(現・株式会社商船三井)のご理解によりエム・オー・シップマネージメント株式会社が管理するコンテナ船「ありげーたーりばてい」(写真1)に協力していただいています。

 

 

 

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