083E航の海水中の二酸化炭素濃度の経度分布のパターンは、082E航のそれとよく似ているが、海水中の二酸化炭素濃度は全航海を通して、082E航の値より増加していた。この理由については、083E航の水温が全航海を通じて082E航の水温より高いことにあると考えられる。
大気中の二酸化炭素濃度と海水中の二酸化炭素濃度の比較から、日本沿岸、ならびに前述した東経158度、161度、170度および西経160度付近を除き、海洋は大気への二酸化炭素放出域であった。
4.1.4 085E航(平成11年12月)の観測結果
085E航は平成11年12月に観測を実施した。結果を図4.1-4に示す。航路は、ほぼ北緯36度線を東進し、その後、西経160度を境に西経120度まで東進するにしたがって、北緯26度まで南下した。観測海域は、その全域が亜熱帯域であった。
水温は全体的に、ほぼ19℃で経度分布に大きな変化はなかったが、東経146度付近で17℃、東経167度付近で22℃、西経179度付近で21℃になり、局所的に小さい変化があった。
塩分は全体的に、ほぼ34.4であり経度分布には大きな変化はなかったが、東経146度、西経171度、西経139度付近で局所的に小さい変化があり、西経139度から西経120度にかけて、34.9から33.6へと減少傾向を示した。
大気中の二酸化炭素濃度は航海を通してほぼ一定で、その平均値は369.5±1.3ppmvであった。
海水中の二酸化炭素濃度は出港後、西経160度まで大きな変化はなく320ppmv前後の濃度を示した。東経167度付近、西経176度付近に見られる20ppmv程度の上昇は、水温の上昇と対応して正の相関を示した。この要因は主に4.1.1項(1)に示す、水温の上昇に起因する熱力学的効果によるものであると推測される。
大気中の二酸化炭素濃度と海水中の二酸化炭素濃度との比較から、この時期の当該海域において、海洋は二酸化炭素の吸収域であったが、前述の西経130以東の塩分減少海域では二酸化炭素の放出域であった。
4.1.5 086E航(平成12年2月)の観測結果
086E航は平成12年2月に観測を実施した。結果を図4.1-5に示す。航路は、ほぼ北緯30度線を東進し、その後、西経150度から西経120度にかけて、北緯24度まで南下した。全域にわたり、亜熱帯域の観測を実施した。
水温は全体的に、ほぼ19℃で大きな変化はなかった。