大気中の二酸化炭素濃度は航海を通してほぼ一定で、その平均値は372.8±0.7ppmvであった。
海水中の二酸化炭素濃度は、東経140度から西経163度にかけての海域で局所的に大きく変動した。特に北緯40度以北の海域に達した東経165、170および175度付近では、水温同様、海水中の二酸化炭素濃度は40〜50ppmv急激に変動した。西経160度付近では、海水中の二酸化炭素濃度は364ppmvから289ppmvまで急激に低下した。この海域では水温と塩分の値に変化が見られないことから、生物活動により海水中の二酸化炭素が取り込まれた結果、海水中の二酸化炭素濃度が減少している可能性がある。
全海域を通じて、海水中の二酸化炭素濃度は上記の局所的変化を除くと、東進するにしたがって緩やかに上昇する傾向を示した。海水中の二酸化炭素濃度が東進するにしたがって上昇する傾向は、080E航と同じであるが、その上昇する度合いは080E航より083E航の方が大きくなる結果が観測された。全航海を通じて、海水中の二酸化炭素濃度の変動幅は、080E航より083E航の方が大きい結果が観測された。
大気中と海水中の二酸化炭素濃度の比較から、一部西経148〜133度の二酸化炭素の放出域を除き、ほとんどの海域で吸収域であった。
4.1.3 083E航(平成11年8月)の観測結果
083E航は平成11年8月に観測を実施した。結果を図4.1-3に示す。航路は東経140度から西経170度にかけて、北緯44度まで北上し、一部、亜寒帯域の観測を実施した。その後、西経120度にかけて北緯29度まで南下した。
水温は、出港後東経152度にかけては約28℃であり、その後東経174度へと東進するにしたがって11℃まで急激に低下した。その後は東進するにしたがって20℃までごく緩やかに上昇した。
塩分は東経140度から西経165度にかけて、東進するにしたがって34.4から32.6まで低下し、西経136度にかけては33.8まで上昇する傾向を示した。一方、西経136度以東では再び33.0まで減少する傾向を示した。
大気中の二酸化炭素濃度は観測海域により359〜369ppmvの間で変動し、平均値は364.7±2.9ppmvであった。
海水中の二酸化炭素濃度は西経160度付近を中心として、413ppmvから330ppmvまで、急激に大きく減少する海域があった(082E航でも同じ海域で観測されている)。東経158度、東経161度、東経170度付近でも海水中の二酸化炭素濃度の急激な変化が見られたが、これらに対応して、水温、塩分の変化はあるものの、二酸化炭素濃度の減少量を説明するに足りるほどの水温の変化は観測されなかった。
