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(1) 熱力学的効果:

水温、塩分の変化によって海水中の二酸化炭素の溶解度および、海水中に存在する炭酸の解離平衡が変化することにより生じる効果。

海水中の二酸化炭素は、炭酸解離により、以下に示すような化学平衡の状態にある。その平衡状態は水温や塩分により変化する。

aqCO2+H2O⇔H2CO3

H2CO3⇔H++HCO3-

HCO3-⇔H++CO32-

この効果は主に水温に依存しており、水温1℃の上昇に対し、海水中の二酸化炭素濃度は約4.2%上昇する。

aqCO2は水和された二酸化炭素を表す(二酸化炭素分子が水に溶けた状態)。上記の化学平衡式のうち、大気と海洋間の二酸化炭素交換をおこす化学種はaqCO2である。

全炭酸(aqCO2+H2CO3+HCO3- +CO32-)に占めるaqCO2の割合は1%未満である。本観測で測定した海水中の二酸化炭素濃度は、aqCO2と平衡状態になった空気中の二酸化炭素濃度である。

 

(2) 移流・鉛直混合・湧昇に伴う混合効果:

移流・湧昇などにより海洋の表面に二酸化炭素・全炭酸に富んだ海水が供給されて生じる効果。全炭酸が増えると上記の平衡により二酸化炭素の濃度は上昇する。

 

(3) 生物活動による効果:

海洋中の生物活動の光合成により減少し、呼吸により増加する効果。

 

(4) 大気と海洋間の二酸化炭素交換の効果:

気象や海象の変化により、大気と海洋間の二酸化炭素の交換によって生じる効果。

 

4.1.1 080E航(平成11年1〜2月)の観測結果

080E航は平成11年1〜2月に観測を実施した。結果を図4.1-1に示す。この図4.1-1は上段から、A)に大気中と海水中の二酸化炭素濃度を、B)に表面海水の水温、C)に塩分を示し、下段左のD)には航路を示した。後述の082E航〜090E航の図4.1-2〜9でも同様に表記する。

航路は、東経140度から西経140度にかけて、ほぼ北緯35度線を東進し、その後、西経140度以東では北緯26度まで徐々に南下して、全域にわたり亜熱帯域の観測を実施した。

 

 

 

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