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第4章 観測の結果

 

4.1 各航海毎の二酸化炭素および水温、塩分の観測結果

 

平成10年度〜12年度にかけ、9回の観測航海を行った。各観測の時期は3.1.1項に、航路は3.2項に示す。航路は航走する商船にとって最も効率の良い針路を選択するので、気象・海象などの状況により、また季節によっても異なる。本事業における9回の観測航海は、その観測海域から一部亜寒帯域を通過観測した航海、およびほぼ東進して亜熱帯域を観測した航海の2つに分けることができる。

海水の状態は水温、塩分によって表され、これらは海域によって特有の値を示している。こうした水温、塩分等のほぼ同じような値を表わす海水を集めて一つのかたまりと考え、これを水塊と呼んでいる(海洋大辞典、1987)。海水中の二酸化炭素や化学成分も水塊に特有な濃度、分布および挙動を示す。

各航海の航路に沿った北太平洋海域における上層の水塊は、北緯40〜42度以北に存在する低塩分の亜寒帯水、それ以南の北太平洋中央水(亜熱帯水)に分類される。さらに、北太平洋中央水は西経160度付近で西部北太平洋中央水と東部北太平洋中央水に分けられる。北アメリカ大陸に沿った西経140〜130度以西の海域では、亜寒帯水と亜熱帯水とが混合した海水がカリフォルニア海流として南下している(海洋大辞典、1987)。また、この海域は沿岸湧昇により海水が深層から表層へと上昇する海域であることも知られている。

北緯40度以北を通過して一部亜寒帯域を観測した航海は、082E航(平成11年5〜6月)、083E航(平成11年8月)、089E航(平成12年8月)の3航海であった。

一方、亜熱帯域を観測した航海は、080E航(平成11年1〜2月)、085E航(平成11年12月)、086E航(平成12年2月)、087E航(平成12年4月)、088E航(平成12年6月)、090E航(平成12年10月)の6航海であった。

個々の観測結果ついては後述するが、各観測により得られた二酸化炭素の分布についてみると、4〜8月の春・夏期に観測した082E航、083E航、087E航、088E航、089E航の5観測では、海水中の二酸化炭素の経度分布が、海域の変化により大きく変動することを示した。また、8月(夏季)に亜寒帯域の観測を実施した083E航、089E航では、他の航海に比べ、海水中の二酸化炭素濃度が大気中の二酸化炭素濃度より高くなり、逆に12、1、2月(冬季)に実施した080E航、085E航、086E航では、北アメリカ大陸側を除き、海水中の二酸化炭素濃度は大気中の二酸化炭素濃度より低い値を示した。これらの観測結果により、海域による特徴や、季節的変化が明らかになった。

このような海水中の二酸化炭素濃度を変化させる主な要因を次に示す。

 

 

 

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