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4-3 政策を推進するしくみ

(1) この節の概要

この節では、デンマークにおける交通のアクセシビリティを推進するしくみについて述べた。

4-2において、述べたように、障害者政策の基本原理は、社会における平等を実現するための障害者の社会への統合(integration)である。この原理を実現していくためには、個別的な法制度の対応以外にも、現状の問題点を指摘したり、具体的な諮問を行う組織の存在が必要である。そのため、社会のあらゆる側面で、障害者に対する、より効果的な公共サービスの提供と公平な扱いを保障する目的でいくつかの組織が設置され、団体が活動している。

(2)では、全国障害者協議会(The National Handicap Council)について述べた。1980年に設置された全国障害者協議会は、障害者団体の代表および地方自治体の関連部門の代表が参加して運営される組織で、障害者の生活に影響を与えている様々な状況について提案を行ったり、改善策を示して取り組んでいる。全ての行政機関が同協議会の諮問を受けることになっている。

(3)では、障害者機会均等センター(The Equal Opportunities Center for Disabled Persons)について記述した。同センターは、政策を現実に具体化するための組織として位置づけられ、行政や省庁間の垣根を越えて活動する役割を与えられている。国内外の情報収集や障害者に対する差別について監視する役割を担う。

(4)では、障害者の権利擁護団体であるDSIについて、その活動内容を述べた。DSIはデンマーク国内で唯一の障害者擁護組織(umbrella organization)で、29の障害者団体が加盟している。35万人の会員を擁し、加盟組織の利益擁護および政府などとの重要な交渉窓口として機能している。

 

(2) 全国障害者協議会

全国障害者協議会は、1980年の行政改革(社会支援、社会サービスの責務を中央から地方政府に移管した改革)に関連して設置された。協議会の構成は、中央政府の政策策定や立法における利用者に関する原理を反映させたものである。障害者が直面している様々な困難について、多くのセクターが関与して解決すると考えられる。この点に関して、中央省庁は、法律の策定と実施に責任を負うのみで、障害者に対する財政支援やサービスの提供は地方自治体の裁量に任されている。

全国障害者協議会は、障害者団体の代表および地方自治体の社会福祉サービス、保健サービス、教育、文化サービスの担当者らの代表が参加して運営されている。さらに、住宅、交通、通信および雇用に関連した分野からも専門家を加えて、活動している。障害者の生活に影響を与えている様々な状況を追跡、評価することが主たる任務である。この目的に従い、提案を行ったり、問題がある状況については改善を行うための実施プランの推進に取り組んでいる。

全ての行政機関は同協議会から諮問をうけることになっている。現在では、障害者政策に関するあらゆる事項は、協議会からの諮問を受けて行うことが、省庁間では一般的である。

 

 

 

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