3-3 政策を推進するしくみ
(1) この節の概要
この節ではイギリスの交通のアクセシビリティに関する政策を推進する仕組みについて述べた。
具体的には、(2)において、1985年から設置されている障害者交通諮問委員会(DPTAC)の役割と活動内容について述べた。DPTACは、障害者のモビリティに関する政府の交通政策について、諮問を行う機関である。メンバーは、関連する省庁がとりまとめ、障害者団体、交通事業者が加わった構成である。必要に応じて各分野の専門家も加わる。近年はDDAの規制適用を受けて、交通車両の基本仕様の策定を中心に諮問活動が多くなっている。諮問活動は個々のテーマごとに設置されたワーキンググループが取り組み、実効性の高い基準作りに取り組んでいる。こうした活動の実態を述べた。
(3)においては、DPTAC以外の諮問組織として、障害者の権利委員会(DRC:Disability Rights Commission)、全国障害者会議(the National Disability Council)、雇用および訓練における障害者のための諮問委員会(ACDET)についてその活動概要を示した。
(2) 障害者交通諮問委員会(DPTAC)の役割
1] DPTAC (Disabled Persons Transport Advisory Committee)の設置
障害者交通諮問委員会(以下DPTAC;ディプタック)は、1985年交通法セクション125に基づいて設置された。障害者のモビリティに影響を与える交通施策について政府に諮問する機関である。事務局はDETR内に置かれている。
委員会のメンバーは議長を始め、関係する障害者団体や交通事業者などから構成されており、基本的には省庁が指名することになっている。
2] 構成メンバー
1998年度年次報告書によると、DPTACの常設委員会は議長1名のほか、委員18名(規定で10名以上20名以下とされている)、オブザーバー13名、書記1名で構成されている。構成員の少なくとも半数以上は障害者が参加しなければならない。
委員には、障害者団体、交通業界団体、消費者団体、コミュニティ・トランスポート団体等の関係者が加わっている。また、オブザーバーにはDETR、TfL (ロンドン交通事業体)のモビリティ担当部局、研究者、非営利組織、行政関係者等が加わっている。全体委員会は少なくとも年に4回開催しなければならない。また、政府が障害者の交通政策に関連するガイダンスを発行する場合は必ずDPTACの諮問を受けることになっている。
3] 活動内容
近年は特にDDAの規制適用を受けて、交通車両の基本仕様の策定を中心に諮問活動を行っている。こうした諮問活動は個々のテーマごとに設置されたワーキンググループが取り組むことになっており、交通事業者や車両メーカー等が加わって、実効性の高い基準作りに取り組んでいる。ワーキンググループは常設委員会のメンバーが中心となって構成されるが、テーマごとに委員会以外の関係者を加えて運営される。DPTACでは以下の6つのワーキンググループが設置されている(表3-3-2-1)。また、活動の成果をまとめた主な出版物は表3-3-2-2に示した。