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安心して移動でぎる社会を目指して−

交通バリアフリー法が施行

 

2つの大きな柱からなる、交通バリアフリー法。

 

平成12年11月15日、交通バリアフリー法(高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律)が施行されました。この法律は大きく分けて、2本の柱からなっています。

1つは公共交通事業者によるバリアフリー化で、公共交通事業者は、鉄道駅等の旅客施設の新設・大改良、車両等の新規導入の際、移動円滑化基準への適合を義務付けるとともに、既設の旅客施設、車両等についても努力義務を課しています。

もう1つは、市町村の主導によるバリアフリー化で、市町村が、特定旅客施設を中心とした地区において旅客施設、道路、信号機等のバリアフリー化を重点的・一体的に推進するため、基本構想を作成し、公共交通事業者、道路管理者および都道府県公安委員会が、基本構想に従ってそれぞれ具体的な事業計画を作成し、バリアフリー化のための事業を実施する、という仕組みになっています。

 

この人に聞く アール・イー・アイ株式会社 取締役 萩野美有紀さん

 

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現場から見た、交通のバリアフリー

「ものをつくる立場で、交通バリアフリー法とかかわっていきたい。」

サイン計画の仕事を通して、交通のバリアフリー化の必要性を実感。

 

萩野美有紀さんは、鉄道駅や空港、一般建築、あるいは複合施設や公共建築物などのサイン計画を幅広く手がけています。また、当財団が実施している「やさしさ評価」の調査にも積極的に参加していただき、その広い視野と実際の体験に基づいたご意見は、交通あるいは都市空間におけるバリアフリーについて、多くの示唆に富んだものとなっています。

「私の仕事は、わかりやすくかつ美しく、物や場所の表示を行うことです。そして、その場所に(その目的とされるところに)正確に到達できるようにサイン計画を組み立てて行くことです。

表示、サインを見る方はさまざまです。当然お年寄りや障害者の方々もご覧になるわけで、これらハンディのある方々にどう応えていくかは、仕事上大きな鍵となります」と萩野さんは話します。また、「弱視の友人から、数字の表示に関し、3を8と見間違う場合が多いという指摘を受け、バリアフリーという考え方は、自分の仕事の最も身近なこととしてあった」とも話します。

 

身近な問題を一つひとつ解決することが必要。

 

交通バリアフリー法が施行され、公共交通事業者や地方公共団体に対して、義務あるいは努力義務といった強制力のある形でバリアフリー化の推進が図られることとなりましたが、この法律を支え、一層のバリアフリーへの意識を盛り上げていくのは、やはり一般の私たちです。萩野さんは、続けてこう話します。「確かに、駅にお年寄りや車椅子に乗った方にやさしい、シースルーのエレベータや、トイレがたくさんできれば、いいに決まっています。しかし、バリアフリーはこれで完全、これで100%ということはないんです。限りなく100%に近づく努力、進んで行く過程が重要なのではないでしょうか。

バリアフリーのための施設整備には、費用も時間もかかります。そしてエレベータやエスカレータを設置したから自分たちの駅のバリアフリーは完了、というわけではないはずです。例えば、お金をそんなにかけずに、トイレに棚を設置するだけで便利を感じる体の不自由な方も大勢いらっしゃいます。

また、障害者というとすぐに車椅子を想像しますが、そうとは限りません。歩けるけれど手摺が必要な方、まったく目の見えない方もいらっしゃいますが、少しは見える方もいらっしゃる……。バリアフリーとひとくちに言っても、要求されるものはみんな違うのです。

 

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空港や駅、あるいは都市空間におけるの各種サイン。「誰もが見やすく、わかりやすく」が要求される。

 

 

 

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