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教材の内容については、鉄道は大手事業者のため、独自に作成した教材を用いています。

バスでは車いすやリフト装置の取り扱いマニュアルに関連して教育を行っていることが多く、また、高齢者・障害者の疑似体験を行う研修や講師を招いて講演形式で研修を実施している例があります。

タクシーでは小規模な事業者が大半であるため、独自の教材整備はなく、全国福祉輸送サービス協会が編集した介助の手引きや、ホームヘルパー資格のテキストを利用している場合が多くなっています。

調査の結果から現在、教育を実施していない、または検討中であるという事業者についてその理由を尋ねたところ、教育を実施していくための情報が不足していることを指摘する意見が多くありました(表4)。

こうしたことから、使いやすいマニュアルの整備が必要で、その際、教育を代行してくれる機関や教育の実施方法なども整理して提供すれば、規模の小さい事業者などは独自に整備する場合に比べコストと時間を節減して対応できると考えられます。ちなみに、アンケートでは過半数の事業者が「よいマニュアルがあれば使用したい」と回答しています。

 

表4 接遇・介助教育を実施していない理由

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* 複数回答している場合は「その他」に繰り入れ。

 

独自にマニュアル整備に取り組んでいる事業者では、その内容として取り扱い項目の最多は車いす・歩行困難者に関するものです。介助法も車いすの取り扱いが含まれるので、図説で多くのページを割いています。次に、視覚障害者への対応、聴覚・言語障害への対応の順です。

厚生省の「障害者実態調査」(平成8年)によれば、障害の種類別に見た身体障害者数は、その割合において肢体不自由56.5%、視覚障害10.4%、聴覚・言語障害11.9%、内部障害21.2%という構成比になっています。こうしたデータから、車いすのお客さまへの対応、歩行困難な方への対応が最頻出項目として取り上げられるのは妥当といえます。

一方で、精神障害、知的障害、内部障害、今後増加するであろう痴呆症などの対応は少なく、重複障害を持つ場合が多い高齢者を単独に扱っている事例も少ないのが実態です。本書でも今後の課題として、調査を進めていく必要性が高いと認識しています。

 

※詳細は1999年度『交通事業者に対する接遇・介助教育プログラムの調査報告書』をご参照下さい。

 

 

 

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