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民間、公共部門を問わず一部の造船所、例えばItalthai MarineやBangkok Dockなどはタイ王国海軍からブロック建造の技術を供与されて、漸く4,000DWT型の船舶を建造したほどである。政府の海軍工廠部は、1984年以来、新建造技術を採用している。海軍工廠もブロック建造の能力を具えてはいるが、ブロックは500-600DWT程度の小型のものに過ぎない。しかし現在では、海軍工廠部はブロック建造、一貫建造、モジュール建造、いずれの工法でも近代技術を適用して2,000DWT型の船舶を建造する能力を身につけた。作業区域、乾ドック、浮ドック、船架、可動機器などが改善されて大型船の建造が可能になれば、この能力をさらに向上させることができる。

 

(3) 現行の修繕技術

実施可能な作業内容は、喫水線上の露出部分の修繕、それより下の没水部分の修繕、機関の修繕、補機の修繕、電気・電子機器、通信機器、航海機器の修繕などである。タイ国内の修繕ヤードでは、船型を問わず上記の作業の大半が可能であるが、15,000-50,000DWT級の船舶になると、その没水部分の修繕にはドックまたは船架の制約がある。また国内修繕ヤードの修繕能力はコストにも制約されている。交換部品の大半は高価かつ品薄で、輸入に頼らなければならない。新鋭機器や修理用具も高価で、その操作には経験を積んだ熟練工が必要とされる。これらの制約から、タイの修繕ヤードでは大型船の修繕や整備はむずかしい。大半の修繕工事は小型船対象か、または緊急時に限られる。したがって域内の他のヤードと比べても、近代技術の体験が乏しい。

 

5. 造船産業の発展

最近では政府の新造船発注が減少したため、タイ国内の造船所は、国家安全保障にとって死活的に重要な造船産業の基盤を維持すると共に、官需の減少を補い、安定した工事量を確保するために、商船や特殊船の建造市場に参入しなければならない。国防ないし政府需要依存から商船/特殊船建造に移行する決意がなければ、このような構造改善は実現しない。

このような状況が、内閣の承認を得た、海事産業開発マスター・プランにおける造船産業発展戦略の背景をなしている。この戦略は特殊船(タグ、浚渫船、哨戒艇、漁船、バージ等)と10,000DWT以下の貨物船に重点を置いている。

マスター・プラン作成に着手した当時、現状の検討から世界的な造船能力の過剰、特に中大型船の新造能力過剰の状況を認識し、タイ造船業は、業界の発展と長期的な事業基盤確保のために不可欠な、特定の3領域に力を注ぐことが必要であると認められた。

 

(1) 製品

慎重な調査と立案作業の後、国内・国際交易に役立つような漁船/プレジャー・ボートに先ず力を入れることが決定された。

現在タイ国内には45,000隻を超える漁船があるが、うち80%超は木造船である。その5%以上を鋼船に転換することになれば、少なくとも10年間、国内需要が続くことになる。

 

 

 

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