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I-3 解撤の現状及び施策(図I-1参照)

 

1. 日本の船舶解撤業

日本の船舶解撤業は今から80年程前にサルベージ業として発足し、1950年代から60年代にかけて一時は活発な活動を行っていたものの、事業環境の悪化により次第に衰退し、現在では、船舶解撤事業者十数社が細々と内航船、漁船等を中心に解撤を実施しているにすぎない。

 

2. 世界の船舶解撤業

世界の船舶解撤業は、各地域の解撤船舶を地域内の国で解撤していた時代を経て、1980年代には解撤船舶の供給が増大し、台湾、韓国、中国等が主要な解撤国として台頭して、世界の船舶解撤量の年間合計は1985年に約2,200万総トンのピークを迎えた。

1980年代後半になると、世界的な海運市況の好転等により、世界の年間解撤実績は大幅に減少したが、1990年代前半には増加に転じた。この間、主要解撤実施国であった台湾及び韓国は人件費の高騰、発生材の需要不足等により解撤事業から撤退し、近年はインド、バングラディシュ、パキスタン等南アジア大陸に世界の解撤場が集中しており、世界の大部分の船舶の解撤を実施している。

 

3. 今後の船舶解撤の動向

1970年代に大量に建造された大型タンカーの老朽化等に代表されるように、昨今、世界の船腹量に占める老齢船の割合が増加してきている。また、エリカ号事件を契機として、IMOにおいて油タンカーのダブルハル化規制の前倒し実施が検討されており、これが実施されれば少なくとも今後数年間は解撤されるべき船舶が高水準で推移する見込みである。

 

4. 船舶解撤に係る課題

老齢の船舶には、アスベスト、PCB等の有害物質が多量に使用されているものがあり、欧州諸国より主要解撤国である発展途上国での解撤作業中に、これらの有害廃棄物が必ずしも適切に管理されていないとの指摘がある。このため、船舶の解撤に伴う環境負荷の低減が国際的に問題となっている。

現在、この問題は、UNEP及びIMOにおいてそれぞれ検討が進められている。

 

 

 

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