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また、船体の型状のもつ性能を算出する排水量等諸計算も、造船家を泣かせる複雑な計算であって、特に復原性能の計算はその最大のものである。これらの苦労も同型船を採用すれば、現図、型板等と同様にその労力が解消してしまう。

このことは、船価に対して非常な影響力をもっている。

現図をあまり画かず、計算もしない木船の建造者は、鋼船を造る場合にも、船主の要求などから安易に線図を変更する傾向があるが、よほどの問題のないかぎり、線図を簡単にいぢってはならない。また、船主を説得して、1隻でも多く姉妹船を建造すべきであるし、船というものは同型船を多く造るものであるということを説得したい。

少なくとも、自社だけでも独特の設計の同型船をつぎつぎと流して造れたら、他社に対して非常に有利な立場に立つことができる。特に、現在非常に普及してきたFRP構造船のように、その特性上高価な型が必要な場合には、この利益がさらに大きくなる。造船業は、よく洋裁と比較される。洋服は上衣にしろ、ズボンにしろ、曲面が至る所にある。

特に、婦人服等は、その曲面の仕上りが評価される。それだけに平たい布地を裁断して、これを縫い合せて美しい曲面を作り上げるための型紙作りおよび裁断が洋服製造の秘訣ともされている。これを平面的に仕立られる和服に比べると布地に多くの無駄がでてくる。曲面を多くすればするだけ、この無駄―スクラップが多くなる。

造船業が建築や土木業に比べて材料の“歩止り”が悪く、また非常に高価なものにつくのは、曲面の加工に一番大きな原因があるともいえる。

 

 

 

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