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さて、大体の計画が決定したならば、材料を集めなければならない。材料を集める前に、仕事をどこでするかを決定しなけらばならない。

材料は、一般に重いものであるから、仕事場の附近に集中する。主要材料である粘土ばかりではない。水も必要であろう。工作するための道具も色々集めたり、便利な工具の工夫もしなければならない。陶器ならばうわ薬を焼くための多量の燃料と“かまど”も必要になる。こうした設備、副資材といったものが準備されなければ、簡単な壼一つでも生産することはできない。これらの材料、設備は生産する数によって変化するし、また製造にたずさわる工人の数によっても変化する。従業員の数というものは、生産するものの完成期―即ち納期、生産の速さによる。従業員が増加すれば給与の外に場合によっては宿舎、給食等の問題も心配しなければならない。

こう述べただけでも、前記の8項目が互いに密接に関連していることがわかる。

その上に、この製品を販売するということになれば、話はもっと複雑になってくる。他人に売るとなれば、製品の検査は厳重にしなければならず、また原価計算を十分にして販売価格もきめなければならない。材料の仕入を極力安くするよう工夫しなければならないし、工数もかけないようにし、極力工程も合理化しなければならない。

設備に対する減価償却や検査不合格品の処分、クレームに対する補償等の色々なむずかしい問題も考えなければならない。

造船の場合は、小型の量産船以外は、注文生産が多いので、案外、販売の苦労は少ない。

 

1.2 造船工業の特殊性

造船工業の特殊性のうちで、特に強調されなけらばならないのは、同型船建造が少ないということである。船は流線形状をもたなければならない。このことは、平面部の少ない流線的な曲面の多い船型となる。こうした複雑な曲面からできている船殻を造るには、どうしても現図という現寸図を画かなければならない。このために、造船所はこの現寸図のひける広い場所―即ち、現図場をもたなければならない。現図場で画かれた船体の曲線を表わす曲線は、型板や“しない”や手板にとられて、外板、肋骨、縦通材、隔壁、甲板および梁等の曲線部の加工に使用される。これは全く根気のいる、しかも特殊技術であって、造船業の宿命的な作業とされている。勿論、この問題に対しても古くから、色々な工夫がされてきて、大型船の造船所では、縮尺現図とか、写真の拡大投影を活用したものとか、電算機を使用した曲線の追跡等も使用されてきたが、小型の造船所ではまだ現図からひろった型板や、手板、テープ等が使用されている。

 

 

 

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