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荒天時における本船の位置保持が難しく、次の試験の準備中に本船が流されたため、自航で試験水域に戻らざるを得なくなり、その結果、降下路にねじれが発生したため試験の続行が出来なくなった。

今回の試験において、投下による進水ではなく、あらかじめ膨張させたいかだを車両甲板から進水させる方法を採用したが、荒天時におけるタグボートとの連携操作が難しく、迅速な進水作業が困難であった。また、本船が一定時間、試験海域に留まるための方策が計画どおり機能せず、本船の自航によらざるを得なかったが、これらはいずれも荒天時状況に対する経験の不足だけではなく実海域における不確定要素が招いたものであり、今後の試験実施に際して貴重な経験であったと考えられる。

試験は以上のように、計画内容の全てを完遂するまでには至らなかったが、怪我や事故の発生がなく終了することができた。

 

4. 得られた成果

1] 今まで安全な試験の実施が困難と考えられてきた荒天時性能試験が、関係者の協力と安全管理体制の元に実施可能であることが示された。

2] 降下式乗り込み装置の荒天時における性能が確認された。投下展張及び作業者の降下試験が実施され、今回程度の荒天時において、基本的に使用可能であることが確認された。

3] 船側の形状が垂直でないと、海上に浮遊するプラットフォームの安定性に影響を及ぼす場合があることがわかり、LSAコードに規定されているプラットフォームに接する船側部は垂直である要件が重要であることが確認された。

4] 船首を風上に向けた初期展張時において、プラットフォーム及び降下路が風下側に流される現象が観察され、ステーワイヤーによるプラットフォームの位置固定方法に改善の余地があることが分かった。

5] 海上における現在のプラットフォームの状況からみて、いかだの係留、乗客の誘導、いかだ離脱等の作業が、実施不可能ではないと思われるが、平穏な海域に較べ、荒天域ではさらなる課題の対応が必要であることが分かった。具体的には、荒天時における安全、容易な退船のためには、海上で要求される作業を最小限にする退船システムの必要性が痛感され、例えば、退船システムの設置場所を極力低い舷とし、降下路を出来るだけ短くすることや、降下路が直接救命いかだに接続され、船上から一体型システムを投下するだけで、降下、乗り込み可能なシステムなどの開発が想定される。

 

 

 

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