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あとがき

 

SOLAS条約の改正により、国内でもIMO基準に適合するMESの荒天時性能確認試験の実施が急務となった。

荒天下での実船試験を国内で実施することは、試験海域の選定、安全面等において多くの制約があるため実行困難であると考えられてきたが、今回、安全面等において関係者からの全面的協力が得られ、MESの荒天時性能試験を実施することができた。

予定した試験を完全に計画どおり遂行することはできなかったが、IMOが提示するシーステートに近い荒天下でMESの投下展張及び作業者の降下試験を実施し、試験時の海上の状態、MESの投下展張状態、作業者がMESの降下路からプラットホームに降下するまでの状態等、が刻一刻、詳細に観察・記録された。試験後の被験者にたいするヒアリング、試験参加者による討論等も踏まえ、試験に使用された2基のMESは、別途、若干の追加試験を必要とするが、いずれも基本的に荒天下での使用可能であることが確認された。

荒天下におけるMESの有効性は、MESの操作に関連する海上作業を短時間で安全・確実・容易に遂行できることが絶対条件である。

退船システムの設置場所、ステーワイヤーによる投下後MESの位置固定方法、海上でのMESといかだ接続作業を必要としない一体型MESの開発等、MESの改善の必要性とその要件に関して多くの知見を得た。今後の検討課題である。

本調査研究では、IMO勧告に定められているMESの荒天時性能を実船試験により確認するとともに、荒天下でのMESの安全・信頼性等に関する基礎資料を得た。また、荒天下での作業者によるMESの作業性、手順、作業時間等を観察・記録した。

これらの資料は、関係者が容易に利用できるようヴィデオ編集等により、まとめられた。船員等の教育、新方式MESの開発等に利用されれば幸いである。

 

 

 

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