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10. まとめ

1. 実施計画の策定

IMOの試験方法に則り、荒天時試験の実施計画を立てるために、試験品製造者、船会社、タグボート担当者、関係官庁等を交えた作業部会が設けられたが、荒天時におけるこの種の試験経験者に乏しく、個々の作業方法、作業手順について、手探りで検討を進めるしかなかった。

特に問題となったのは海上に降下した試験者を回収する方法であり、数度に渡る作業部会を通じて、試験船舶及びタグボートの調査を含め、様々な方法について検討した。その中で試験用いかだの他に試験員回収用(待避用)救命いかだを用意してこれに乗り移る方法や、その他梯子等で舷門から本船に移乗する方法、タグボートで回収等、万全を期すこととした。

その他、試験品の設置方法及び回収方法、漂流試験中の本船の位置保持方法等、必要と思える項目について実施計画を作成した。

 

2. 予備試験の実施

満載荷重状態における漂流試験において、プラットフォームに救命いかだが係留された状態で波を受けた時の挙動をあらかじめ確認しておく必要があると考え、波浪水槽での予備試験を実施した。波に対する試験品の位置関係や波の状態が異なるため、実海域試験における状況そのものを推定することはできなかったが、試験品や係留部に異状は生じず、強度的には特に問題がないと分かった。

荒天時における降下路やプラットフォームの動き等を様々に検討した。その中で、最も危険と考えられる状況を作りだし、その状態での降下試験を製造者の試験タワー及び水槽で実施した。その結果、必要に応じてプラットフォーム作業者が降下路を支えることにより、危険な状況には至らず、安全な降下が可能であろうことが確認された。

 

3. 試験の実施

実施にあたり、万一にも作業者、試験担当者に怪我等の発生、また、本船、タグボートによる事故が生じないよう、事前に安全管理体制及び指揮命令系統について十分配慮して、人員の安全を最も優先して試験を実施することを確認した。

試験当日は、試験実施中を通じて、南西の風15〜17m/sが吹き、目標を上回るビューフォート7の風浪階級が得られた。波は有義波高1.6〜1.7m、最大波高2.9mであった。

最初に実施したスパイラル式の試験品は、船首を風上に向けた初期展張試験において、降下路及びプラットフォームが20秒間で正常に展張し、また引き続いて行われた風下側における4名の試験員降下試験も問題なく終了した。その後の救命いかだをタグボートからプラットフォームに渡す作業中、安全な作業の続行が困難と判断し、試験員の揚収を行った。

次ぎに実施したジグザグ式の試験品も、船首を風上に向けた初期展張試験において、降下路及びプラットフォームが25秒間で正常に展張し、安定して浮遊していた。

 

 

 

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