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第2部 調査結果の分析

I 就業・雇用数の動向

政府は、IT技術革命を中核に据えて景気回復を軌道に乗せるべく諸施策を講じており、一部の企業には業績の向上が見られるものの、全体として景気の先行きは相変わらず不透明といわざるを得ない。このような情勢を反映してか雇用に関する指標にも改善が見られず、失業率は4%台後半に張り付いたままである。しかし、平成13年度の新規学卒者の採用を従来より増やす、あるいは採用停止を解除するなどの企業が増えており、また、企業の雇用過剰感が弱まっているなどの情報もある。一進一退だった雇用動向にも変化の兆しが現れてきたようである。今回の調査の結果がこのような情勢を捉えているのかどうか分析を進めてゆきたい。

 

1. 常用雇用者数の増減状況

(1) 常用雇用者数の過去1年間の増減状況〔第1・2表参照

平成11年10月から平成12年9月までの1年間の常用雇用者の増減をみると、この間に「増やした」と回答した企業の割合は5.5%で昨年の6.9%より1.4ポイント減少し、これに対し「減らした」企業は64.5%で65.0%であった昨年と変わりはなく、常用雇用者を減らしている企業が依然として多いことが分かる。また、「おおむね変わらない」と回答した企業は30.0%(昨年28.1%)で昨年と大きな変化は見られない。以上の数値をみる限り企業の雇用調整はまだ続いているように見受けられる。

なお、この数値を昨年調査した「常用雇用者の今後の方向」(予測)の数値と比べてみると、昨年は「増やす方向」が5.5%、「おおむね変わらない方向」が30.3%、「圧縮必要」の回答が64.2%であったところ、本年調査の結果では「増やした」が5.5%、「変わらない」が30.0%、「減らした」が64.5%であったので、予測とほぼ同じ数値になっている。偶然の結果だということを否定しきれない面もなくはないが、従来は両者の数値はかなり乖離していたことを考えると企業の要員計画がここへきてある程度見通しが立て易くなったという一面を覗かせているように見受けられる。

ア. 企業規模別

常用雇用者の過去1年間の増減状況を企業規模別にみると、「増やした」は「5千人以上」で4%(昨年8%)、「3・4千人台」が8%(同12%)、「1・2千人台」が6%(同8%)で昨年より2〜4ポイント落ちており、「千人未満」が昨年の2%から本年は4%と唯一増加している。一方、「減らした」と回答した企業は、「5千人以上」が80%(昨年66%)、「3・4千人台」が74%(同59%)とかなり大幅に増えているのに対し、「1・2千人台」は58%(昨年63%)、「千人未満」は62%(同70%)と僅かながら逆に減っている。全体として見ると、大きい企業では過剰雇用の状態がまだ続いている会社が多いということになろうか。

イ. 産業別

産業別にみても、常用雇用者を減らした企業はどの業種も5割を超えており、なかでも「運輸・通信業」は「減らした」の回答が92%(昨年83%)に達し、「農林漁業、鉱業、建設業」も71%(昨年61%)と昨年を上回る比率となっており、「製造業」も65%(昨年65%)、「金融・保険業、不動産業」も65%(昨年67%)と高く、総体として昨年からの改善はみられず雇用調整は当分続くように見受けられる。

 

 

 

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