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また、くず屋さんが家の前に来たときは、用事がなければいち早く断りなさいと。なぜかというと、くずがないのに表に立って時間を費やしてもらったらもったいない。よそに行って紙くずを買ってもらったほうがいいということで、くず屋さんに「今日は用事がないから早く帰りなさい」と言っています。これは思いやりの言葉であったと思います。

夏に表を歩くときには、日陰を歩かないで日の照るところを歩く。他の人が日陰を歩くことのほうが大切なので、その人たちに日陰の道を譲る。あるいはお弟子さんたちと寝る際は、夏の暑いときには奥の蒸すようなところで寝て、冬の寒いときには入り口の寒いところで寝るということを常にしていたということです。また、岡崎のほうで大火があったときは握り飯をつくって持っていってあげたり、上京、下京で困窮した人たちがいるという話を聞くと、お金を包んで持っていってあげたりもしています。

梅岩は生涯独身でしたが、なぜ奥さんをもらわないのかと聞かれると、自分には大変な役目があるので、「大道を失わんことを恐れる」と。妻や子どもがあって自分が説くべき大道を誤るようなことになると困るから、結婚しなかったのだと言っております。また、禁制を破った弟子の尼を破門したという厳しさもあるようです。

 

 

 

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