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今求められているのは、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、そして日本の過去から学んだ方法や手段を使って、日本人が自ら開発した新しい思考や感覚を試す、創造性のある実験です。奇妙に思われるかもしれませんが、徳川時代の中期は心学運動も含めて開放性と実験主義にあふれていました。これをそのままそっくりコピーするというわけではありませんが、創造的な発明に刺激を与えるものとして利用できる一つの例と言えるでしょう。

しかし、日本は活力ある創造性をもっているにもかかわらず、外部の者は今日の日本に対して、意気消沈して世界の中の自分の役割に確信がもてず、再び自信を取り戻すために内向きに自国の歴史を重視し、国体などの古い象徴へ回帰しようとしている国という印象をもっています。徳川時代の中期は鎖国の真っ只中にあったにもかかわらず、開国主義の雰囲気がありました。しかし今日の日本は開国の真っ只中にあるにもかかわらず、鎖国主義の雰囲気が見受けられます。

 

 

 

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