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江見 先生の教えは本当に素晴らしいと思います。人と人とがコミュニケーションを持つには、話す、聞く、書くの三つがあります。その内、書く行為は、物事を確かなものにします。梅岩先生がお偉かったのは、言行一致もさることながら、ご自分の思想を、自分の言葉で『都鄙問答』と『倹約斉家論』という確固たる文章にしてお残しになったことだと思います。もし、この二つの文献がなかったら、梅岩先生の教えも今日まで伝えられなかったのではないかと思います。

―この教えを今に、地元亀岡からいかにして世界に発信するかですね。東田さんお仕事のお立場でいかがでしょうか。

東田 最近、文部省が「総合的な学習の時間」ということを打ち出していますが、ああいった場に、先ほどのビデオや紙芝居を、出前で持って行って、市民の皆さんにもっと積極的に見ていただくとよいと思います。総合学習には地域住民や子供たちも入れますから、その場でフリートークで広めたらよい。先ほどの「医者になるには」の話など面白かったですから、テーマによっては、子供さんも結構しゃべると思います。

中村 賛成です。梅岩先生の出生地、東別院に生まれてよかった、あるいは来てよかったと子供たちも梅岩先生を誇りにしています。きっと話します。私も別院小学校に勤めてよかったと思っています。

谷口 今の出前講座はよいアイデアですね。私が生涯学習を打ち出したころ、文部省は生涯教育といっていました。教育は、上から教え育てると一方的な面がありますが、学習は、自らの意志で学ぶことです。『都鄙問答』も『倹約斎家論』でも問答形式です。この問題の中で、一人ひとりが真に納得してこそ本当の勉強になります。問答形式には最強の効果がありますね。

―出前講座の要請があったら、木戸さんや藤田さんは応じるお気持ちがおありですか。

藤田 あります。特に、中学生や高校生に見てほしいと思っています。若い時に見ていただいて心に残してほしい。見ていただく場があれば、押しかけて行ってでも見ていただきたいと思っています。(笑)

木戸 個人的には、ロータリークラブで、もし新しく予算がつけば、第二、第三の「梅岩先生」のビデオを作りたいと思っています。

黒川 今の中学校や高校には、総合学習で、自分たちの住む地域の勉強をしています。ビデオや紙芝居は、地域学習の良い資料ですから、資料館の立場でも積極的にアピールしていきたいと思っています。

―いよいよ終わりに近くなりました。最後に会長さん、しめくくって頂けませんか。

谷口 「ガレリアかめおか」の心学講舎の入口に、「聴講無料。お女中方はどうぞ奥へ」との、開講時の行灯の表示をそのままコピーして掲げています。“お女中方”とは“女性の皆さん”という意味です。さて、今年、国会で<男女雇用機会均等法>が可決されました。これは、逆に言えば、今もって男女平等を声を大にして言わなければいけない状況にあるということです。この問題を、梅岩先生は、今から二七〇年も前に、講席の玄関に堂々と掲げられたということは、素晴らしい先見の明だと思います。梅岩先生以来、この男女のそれぞれの位置関係について説いた学者は一人もいません。これ一つとっても、梅岩先生の教えの素晴らしさがわかります。梅岩先生を生んだ地元亀岡は、誇りをもって、梅岩先生と心学を世界に発信していきます。

―皆さん、長時間ありがとうございました。

 

 

 

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