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私どものロータリークラブでは古くから、「一道一徳」の観念があり、「奉仕第一・自己第二」を掲げ、物欲を離れ、報酬は付随的なものと認識すべきとしています。石田梅岩先生の「石門心学」と通じるものがあるように感じております。

―木戸さんは同じお立場で如何ですか。

木戸 商売の基本は、先ほどから何度も出ました梅岩先生が説いておられる“先も立ち、我も立つことを思うなり”にあると思います。お客さんに喜んでいただいて正当な利潤を得、それで従業員を養い、社会へ貢献するという考え方です。先ほど紹介しましたビデオのテーマも「ありべかかりの心のままに」と言いまして、「あたり前に生きること」に焦点をあてて、それを小学生にわかりやすく制作したいと考えました。しかし、セリフの中で、「正直」「勤勉」「倹約」と簡単に言いますが、あとで考えてみますと、実際には難しいことだなあーと考えさせられました。

黒川 先ほど出ました「正直」「勤勉」「倹約」を現代風に言い換えますと、「正直」は信頼につながりますし、「勤勉」は、個人の能力を高めるためにはぜひ必要なことで、今行われている社員教育と一緒だと思います。「倹約」はケチではなく、ムダをなくすことで、今日的には、資源を大切にしたり環境問題に対応することにも通じます。二七〇年前の梅岩先生の時代とは形は違いましても、その言葉の精神は、今もそのまま通じ、日常生活に直結していることが梅岩先生の思想のすごさだと思います。

 

『日本を創った十二人』の一人

 

―梅岩先生の思想はすごいということでしたが、皆さんが梅岩先生に対して持たれる個人的な魅力があれば紹介してください。

大庭 一介の商屋の番頭であった人が、私塾を開いたというのがまず魅力的ですね。しかも、講義をする時には正装して立たれたというのも魅力的です。これは、自分が教えているのではなくて、何か、天のようなものにつき動かされるようにして教えておられたのでしょうね。

中村 開講しても当初は誰一人聞きに来ない。最初の受講生は、肥くみのお百姓さんだった。そのたった一人の受講生のために先生は一生懸命にお話しになったそうですね。

江見 梅岩先生の素晴らしさは、おっしゃっていることと、なさっていることが一致していることですね。言行一致です。先生が亡くなった時、遺品の中にはムダな物は何一つなかったそうですね。また、他人の物と自分の物とはハッキリと区別するようにご指導になった。この所有の概念は資本主義の基本です。これは日本のその後の国づくりに大変役だったそうですね。

黒川 最近、PHPから、堺屋太一さん著の「日本を創った十二人」という本が出ていますが、その中に梅岩先生が入っています。最近、梅岩先生をとりあげた本が多いですね。

谷口 今、皆がさまよっているからです。何がよいのか、終着地を求めている。そのヒントになるのでしょうね。

東田 僕自身どっちを向いて行ったらいいのかわからない。自分の子供がどうなるかがまず自信がない。皆、自分の足元の座標軸がくずれている感じがしますね。本日は、梅岩祭にお参りさせて頂き、良い出会いをさせて頂き良かったと思っています。

 

 

 

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