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もう少し日本人にわかりやすく説明せよということを、いろいろな機会にご指摘いただいておりますが、このサプライチェーンマネジメント、SCMという言葉も実は、そういった意味では西洋の言葉をそのまま日本語に訳したということで、カタカナ文字になっているわけでございまして、おそらくその意味につきましても皆さん必ずしも共通の定義で使っているわけではなく、人によって、いろいろと違った解釈をされているかと思います。

今回、私がここでお話をさせていただくにあたりまして、サプライチェーンマネジメントを、このスライド(図2)にございますような形で定義をさせていただければと思っております。すなわち、「部門・拠点・国境を越えた情報流/物流/金流マネジメント」ということでございまして、結局どういうことかといいますと、サプライヤー、すなわち工場を例にとれば部品サービスの供給者、提供者、協力会社といった方々から工場、それから卸のディストリビューションセンター、配送センター、小売の配送センター、さらには小売店舗そして最後に顧客と、こういった供給側のサプライヤーから顧客に至るまでの一連の流れ、これが単にモノの流れだけではなく、情報の流れであり、あるいは決裁を含めたお金の流れであり、これら全体の経営管理をここではサプライチェーンマネジメントと定義させていただければと思っております。

それでは「なぜ、今、サプライチェーンマネジメントなのか」ということでございます。非常に簡単な図(図4)がございますが、今から30年前を起点といたしまして、そこから10年きざみで時系列を横軸にとり、縦軸に取り扱う商品の量、あるいは金額を示したものでございますが、この30年間をみてみますと、製品ライフサイクルの短縮化、あるいは製品そのものが非常に多品種化してきたということは、皆様、ご案内のとおりだと思います。さらに、単なる国内の同業他社間との競争ということだけではなく、まさしくボーダレス、国境を越えた世界レベルでの競争といったものが起きております。したがいまして、ここにございますように右肩上がりで製品の数、種類は増えていくということが起きたわけでございますが、その一方でひとつの製品の寿命、いわゆるライフサイクルは年を追うと共に短くなっていく。さらには顧客からのリピートオーダー、繰り返し同一製品を発注する、その注文も少なくなっていく。あるいは一回あたりの発注量も少量化していくといった動きがますます加速化してきております。

すなわち市場の変化が早く、激しくなっていく中で、経営者の方にとってみれば機敏に対応することが非常に優先的に考えるべき経営課題になってきております。ここでも聞き慣れない言葉で「アジル」という言葉が書いてありますが、これは何だと申しますと「機敏」ということでございまして、要するに機敏な経営が、産業、業種を越えて、経営者の方々にとっては最優先の課題になってきている、ということがいわれているわけでございます。

さて、このように非常に市場の変化が激しい中で、経営コンサルタントあるいは経営の指南書を紐解いて見ますと、いろいろな方がいろいろな事を言っているわけでございますが、例えばある人はこういう事を言います。すなわち、このように非常に変化が激しい時代ですから、なるべく無駄な在庫を持ちたくない、在庫を削減すべきであるということで、徹底的に在庫を減らすということを優先的に考える、という方がいらっしゃいます。

 

 

 

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