日本財団 図書館


一方で、非常に変化が激しいということですから、お客様が欲しい時にその商品が手元にない。すなわち商品が切れることによって、販売の機会を失ってしまう。これは絶対に避けなければいけない。ということで、販売機会の損失のリスクを出来るだけ最小化するように経営をすべきである、ということを言うわけであります。

すなわち、ある人にとってはとにかく徹底的に無駄な在庫を削減すべきだ。これは生産工程でもそうでありますし、流通過程でもとにかく削減しろ。一方で、ある人はとにかく、非常に機敏な対応をするために、常にお客様のニーズに合うように、ある程度の在庫を保有すべきだということでございます。

それでは一体どちらのことを優先的に考えればいいのかということで、非常に多くの経営者の方々、あるいは管理職の方々が悩んでいらっしゃるという、まさにジレンマがおきているということでございます。

さて、そうしますと、こういった相反する2つの概念、在庫削減、在庫保有、この2つを制約条件、すなわち資材、生産設備、労働力、こういった制約条件の中でいかに最適化していくかということがサプライチェーンマネジメントの本質でありまして、特に重要なことはダイナミックに維持することでございます。(図5)

例えば昨年はその販売量に対してこの在庫量が適正であったとしても、はたして今年同じ事がいえるかと申しますと、市場は日々刻々と変化しているわけでございますから、実は昨年正しかったことが今年も同じように当てはまるとは断定できないわけでございます。このような変化にダイナミックに対応していくといったことが、サプライチェーンマネジメントの本質に係わってくる、とこのように考えております。

このように、教科書的には、なるほどということで、皆さんから共感をいただけるのですが、実際には相当難しいということが、現場レベルでは起きております。ここではいくつかの事例をあげていますが、例えばあるパソコン関連の部品を製造しておりますA社の場合です。ご案内のとおりパソコン、半導体いずれにいたしましても非常に製品ライフサイクルが短い、代表的な商品でございまして、例えば半年で製品価格が1/5に落ちてしまうといったことも、過去にアメリカ等で起こっております。そういった意味で、販売店側では、とても怖くて流通在庫を抱えられない、2週間前にならないと調達数量を確約できないというような事が、現にアメリカ等では起こっていたわけでございます。(図8)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION