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(2) 無人航送に対応した相手地域側の集配体制の構築

宮崎県のトラック事業者が海上輸送利用のメリットを活用するためには、無人航送を促進していくことが必要となるが、その際には、往復の貨物を確保することに加え、関東・関西等の相手地域側における集配体制の構築が課題となる。

大手事業者であれば社内体制の整備で対応可能であるが、宮崎県内の中小トラック事業者においては、大都市圏側の事業者との連携による集配体制の整備、複数の事業者の共同による集配体制の整備、海運会社による集配サービスの提供等が想定される。このうち、大都市圏側の事業者との連携においては、集配料が九州側と比較して割高であり、このことが無人航送の促進を阻害していることが指摘されている。

 

【トラック事業者の事例】(V社)

・宮崎港から川崎港へのフェリーも利用することがある。同区間では以前、ヘッドレスのトレーラーで無人航走していたこともあったが、関東側の横持ちを当地の運送業者に依頼するとヘッド料が高く、採算がとりにくかった。

・ヘッドレスでフェリーを利用する場合、すぐに帰り荷があるとは限らず、相手地域側にシャーシや人を置いておく必要が出てくる。船社系の運送業者などは無人航送を行うため、シャーシを多数所有している。逆に言えば、東京に営業所を設置するか、人員を配置すればヘッドレス輸送に対応できるとは思うが、そこまでしてやる意欲を持っていない。

 

【南九州の荷主企業の事例】(D社)

・近年は長距離トラック運転手が高齢化しており、泊まり勤務があるにもかかわらず、従来のように給与水準が一般の職業より高くないため、若者の人気もない。そこで、無人航送を促進しようとしても、大都市圏側の港湾からのドレージが高く、コストメリットがなかなか出ない。端末のドレージまでフェリー会社サイドでセットで提供してくれればよい。これからはフェリー会社もただ運ぶだけではなく、宅配業者のように一貫サービスを提供しなければやっていけないだろう。

 

(3) 考察

○近年導入が相次いでいる求貨・求車情報システムは、複数の業種・企業間で貨物・車両の最適な組合せを実現し、全体として物流の効率化を促進していこうとする取り組みと位置づけることができる。厳しい経営環境におかれている中小トラック事業者が、今後生き残りを図っていくためには、基本的な考え方として、このように複数の企業間で連携を図り、業務の効率化を促進していくことが必要と考えられる。

○求貨・求車情報システムは宮崎県内のトラック事業者が大都市圏からの帰り荷を確保するために有効な手段の1つと考えられるが、各システムには、その主体となる企業の母体等によりさまざまな特徴があることから、いずれのシステムが効果的であるのか十分に検討する必要がある。また、場合によっては、県内事業者を中心に組合等を設立し、独自のシステムを構築することも選択肢の1つである。

 

 

 

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