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これに関連して、旅客輸送については、「運輸政策審議会第3回海上交通部会答申〜国内旅客船事業における需給調整規制廃止に向けて必要となる環境整備方策等について〜」(1998年6月)において、以下に示すように、過当競争の防止や不定期航路との機能分担について慎重に検討する必要があるとしている。

こうした議論も踏まえ、貨物輸送における航路維持に向けた国・地方公共団体の関与のあり方については、今後もさらに議論を深めていく必要があると考えられる。

 

【需給調整規制廃止後の事業制度のあり方(抜粋)】

旅客運送について需給調整規制を廃止した場合、航路によっては過当競争が生じて航路の維持が困難になり、結果的に利用者の利益が損なわれる可能性があるが、このような場合、独占禁止法で対応できる場合は限られ、また対応するとしても事後的救済となるため、現行海上運送法第32条のように行政が緊急避難的に過当競争排除のため一定の関与を行う制度が必要であるとの意見がある。一方、このような制度は需給調整規制を廃止し、競争を促進するという今回の改革の目的に反し、かえって利用者の利益を損なうおそれがあるとの意見もある。このため、このような制度の導入の必要性については、独占禁止法に基づく措置等他の代替的措置との関係にも留意しつつ、慎重に検討することが適当である。

また、一定の航路において一定の日程表に従い運送を行う定期航路事業は、需要の多寡に関らず定時に運航を行うことにより人々の日常生活や経済活動が安定的に行われることを支えており、不定期に運送を行う不定期航路事業に比べてより公益性・公共性が高い。しかしながら、定期航路事業及び不定期航路事業の双方について需給調整規制を廃止すると、一定の日程表に従って運送を行う義務を負った定期航路事業者が競争上不利な条件の下におかれ、定期航路事業の維持が困難になる場合も想定される。このため需給調整規制廃止後の制度設計にあたっては、定期航路事業の公益性に配慮し、不定期航路事業との機能分担を考慮することが適当である。

(資料)運輸政策審議会第3回海上交通部会答申〜国内旅客船事業における需給調整規制廃止に向けて必要となる環境整備方策等について〜(1998年6月)

 

4] 港湾間・地域間の連携の促進

海上輸送網の充実・活用にあたっては、海上輸送が県外もしくは海外と結ぶものであること、したがってその利用対象となる貨物流動も広域的なものであることから、航路上の各寄港地やその背後地域との緊密な連携を図る必要がある。

具体的には、国内定期航路の拡充・活用にあたっては、相手先港湾と連携した海上輸送の拡充・利用促進が有効であり、特に帰り荷の確保が懸案となっている関東方面との輸送においては、相手先港湾との連携を一層強化していくことが求められる。また、大都市圏から北部九州を経由する南九州向け貨物の直送化など、広域的な物流構造の変革に向けて、南九州各県の連携も期待されるところである。

一方、国際定期航路の拡充・活用にあたっては、地方港単独での航路開設は難しいことから、国内の複数の港湾が連携して航路の拡充に取り組むことが適当である。現に細島港の台湾航路の1つは、中国・四国地方の複数の港湾との連携によって開設された経緯があり、油津港に開設された韓国航路も細島港に就航していた航路を延航したものである。こうした実績を踏まえ、今後とも港湾間の連携を強化していくことが期待される。

また、北九州港響灘地区や博多港アイランドシティ地区において大水深バースを有するコンテナターミナルの整備が進められていることなども踏まえ、九州全体における最適な役割分担の実現に向けて、各港湾が協調しつつ、細島港をはじめとする県内各港湾が適切な役割を担っていく必要がある。

 

 

 

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