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(3)遺跡の発掘と保存、活用

狭山丘陵には数多くの遺跡が存在する。このことは豊富な湧水、豊かな森の恵み、動植物が存在する狭山丘陵を生活空間とした、原始・古代から現在に至るまで連綿と続く、人と自然との関わり合いの歴史を物語っている。遺跡やそこからみつかる遺構や遺物は、過去の人と自然との関わり合いを知る重要な材料であると同時に、地域に根ざした人々共有の財産でもある。こうした遺跡や遺物は、土地に埋蔵されている文化財ということで「埋蔵文化財」と呼ばれるこの埋蔵文化財は文化財保護法という法律に基づき保護されている。しかし、現実には土地と密接な関係にあるため、常に人間による自然への働きかけ、すなわち土地開発のなかで失われていく性質の文化財でもある。

特に現在のように大規模な土地開発が多数行われる状況は、日本列島から急速に、そして多数の遺跡が失われていく危機的状況である。そこで、貴重な共有財産たる遺跡を、開発によって破壊される前にせめて記録として保存していこうという「記録保存」という名の下に発掘調査が行われるようになった。

現在行われている発掘調査は、純粋に遺跡の研究のために行われる「学術調査」はひじょうに少なく、その大半が開発に伴う遺跡の「緊急調査」である。また、発掘調査自体も、学術調査であれ、緊急調査であれ地中に埋もれた遺物や遺構をあらわにし、それらを記録したうえで取りあげてしまう、「情報と引き換えの遺跡の破壊」という性格を持っている。そのため一度掘ってしまったら二度と元の遺跡には戻せない。そこで、可能な限り遺跡は将来にわたり残すことが望ましい。遺跡は史跡として指定され法的に保護される場合もあるが、先述のように遺跡は土地と密接に関わるっている。したがって、遺跡を保存することはその地の自然保全にもつながり、それらの総体として地域に根ざした歴史的景観を保護することになる。

狭山丘陵に眠る遺跡は、その自然景観も合わせて地域の共有財産、すなわち地域のポテンシャルをあげる地域資源のひとつなのである。ここでは遺跡を守ると同時に、地域資源としてうまく「活かす」ことが大切である。遺跡を活用するために、復元などを行った史跡整備や各遺跡間をつなぐネットワークなどのハード面の整備や、遺跡解説ボランティアなどのソフト面の充実を図ることで、遺跡を保存した意義や発掘調査の意義を広く伝える。ことができる。さらには、まちづくりの一環として活用されるなど、狭山丘陵という地域に根ざした保護・活用が期待される。こうした期待は、狭山丘陵を核としたエコミュージアムとして位置づけられるものであろう。

 

 

 

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