2] 花祭り
4月8日の釈迦の誕生日を祝う行事であるが、農村では「オシャカサマ」とか「シガツヨウカ」などとよばれて農休日としているところが多い。この時期はヨモギの新芽が摘めるようになるので、丘陵周辺の農家ではクサモチ(ヨモギ餅)を作って食べた。東大和市や武蔵村山市では4月15日(本来は旧暦3月15日)の「ウメワカ(梅若)」とよばれる行事でもヨモギ餅を作っていた。
3] 盆行事
この地域の盆行事は月遅れの8月中旬に行われるのが一般的だが、地域によっては7月中旬、同下旬、8月上旬、同下旬等さまざまである。これは養蚕が営まれていたころのなごりで、そのまま引き継がれているためであろう。
盆には盆棚を設ける習わしがあり、ここにチガヤで編んだ細縄が使われている。また水かけ用のミソハギも欠かせぬ植物である。現在も農家の庭先等に植栽されているのをよくみかける。
4] 十五夜、十三夜
農耕儀礼としての十五夜行事におけるススキの重要性についてはすでに記述したとおりである。このとき、ススキといっしょに供えられる花は「十五夜花」とよばれ、オミナエシ、ワレモコウ、ヤマハギ等が利用されている。
オミナエシはススキとともに秋の七草のひとつであり、適度に管理された里山を象徴する植物であったが、近年はほとんどみられなくなってしまった。
5] オカマサマ
竈の神をまつる行事であり、10月30日あるいは31日に行われた。この日は「オカマ団子」とよばれる粳粉を使った団子を作り、これをアカマツの枝にさしたり、ナンテンの葉を敷いた一升桝や重箱に盛って供えた。また、東村山市久米川町では、神様の送り火として夜にひとつかみのスギの葉をほうろくの中で燃やしたという(東村山郷土研究会『東村村山の年中行事』、1987)。
(2)民間信仰とのかかわり
里山を基盤とした社会では、さまざまな講が営まれていた。これらのなかには天体や気象、生物等と関係するものがあり、その代表的な事例をいくつかとりあげる。
1] 雹まつり
本来は榛名講に因む信仰で、この日は各地でお日待ちが行われた。東村山市や瑞穂町では「ハンナコウ」と称し、武蔵村山市(3月)や東大和市(4月)では「ヒョウマツリ」として定着していたようである。
ふつう榛名講は旧暦4月に行われ、代参者が雹除けや嵐除けにご利益があるとされる榛名神杜に参拝してお札をいただいてくる。これを受けた各家庭では、竹の棒に札をはさんで杉の葉をかぶせ、田畑に立てたという。