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3] エコミュージアムの展開に不可欠な要素

エコミュージアムは、自然景観、河川や建築物、歴史的・文化的遺産、産業遺産をはじめ、様々な生産活動や地域住民が生活の中で生み出し、活用してきた文化をも、文化的遺産としてとらえ、それらを展示することで成立する。そういった観点で見ると、様々な資源をもつ本町の場合、その全てが展示対象として該当し、エコミュージアムも充分展開可能であると思われる。

また、エコミュージアムは定義や形態が固定化されるものではないため、今後のまちづくりにおいて様々な行為を付加していくことが可能な考え方でもある。

しかし、エコミュージアムヘの関心が高まり、日本でも多くの実例が報告される中、具体的推進において、充分に検討されるべき課題が多いことも事実である。以下に、岩橋恵子(志學館大学文学部助教授)により警鐘が鳴らされている事項を二つ取り上げ報告する。

 

(エコミュージアムの推進に当って充分に検討されるべき事項)

1. 住民参加の問題

○「エコミュージアムは、行政と住民が一体となってつくっていくもの」ということが重要であるが、この概念がもともと住民が中心となって結成された協同体の自律性や住民参加の土壌が定着しているフランスにおいて提唱されたものである。

○そうした土壌が未確立な日本においては「行政と住民の一体化」は結果的に「行政主導による住民の統合」になる可能性が高い。

○日本でも、近年のボランティア活動やNPOへの関心の高まりに依拠しつつ、住民の発意・発想を土台に展開されることが重要である。

2. エコミュージアムの定義の固定化の問題

○エコミュージアムは、ある一定の定義に当てはめるのではなく、地域及び地域住民のダイナミズムの中で絶えず創造されていくことが大切である。

○日本では「コア・アンテナ(サテライト)形式」が、あたかもエコミュージアムの絶対的形態であるかのように扱われることがあるが、それはあくまでも一つの形態であり、住民主体のアクセスをより豊かに追及する思想を忘れてはならない。

○地域の実状に応じて、様々な方式を模索し、自由な形態を検討できることもエコミュージアムの特徴である。

資料:(社)家の光協会「エコミュージアム〜21世紀の地域おこし」(第二章 岩橋恵子執筆)

 

上記の二点の検討事項が担保できれば、本町でのエコミュージアムの展開は十分実現可能であると考えられる。

「住民参加の問題」については、その推進体制の構築の必要性が高く、第6章で対応方策の検討を行うこととする。

また、「エコミュージアムの定義の固定化の問題」については、特に空間整備という観点から、既存の資源をネットワークする計画において十分留意し、地域住民のニーズをも反映した計画内容とすることが最重要課題であると考えられる。

 

 

 

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