日本財団 図書館


4. 事例から得られる示唆

 

(1) 自らリスクを負う住民の主体的な取り組みが継続・発展の源泉

「のどか村」は、農業の後継者不足に悩む住民たちが協議を重ね、地区全体で農業を守るという意思統一のもとで、地区の存続を掛けて地権者は用地を提供、地区全戸出資で設立した法人に地区住民自らが就労するという、まさに運命共同体を構築した。「のどか村」の存続が地区の存続を意味し、自分たちの生活基盤であるという切迫した状況が、事業の収益性や効率化、利用者ニーズの反映、サービスの質の向上を自然に促す仕組みとなっている。同様に「黒壁」も郊外の大型店舗に押され、空洞化した商店街に危機意識をもった地元青年会議所が母体となって第三セクターを設立し、空き店舗を活用した商業戦略が成功し、市街地は再生され、地域住民は誇り意識を取り戻した。また「日本1/0村おこし運動」では事業の推進組織である集落振興協議会の運営資金を全戸の負担により賄っている。

いずれの例も地域の課題に対して危機感をもった地域住民が当事者意識を持ち、自らのリスク(用地提供、出資、就労)により、ビジネス(事業)を展開したことが市場競争力を持つ特産品の開発につながり、雇用創出、住民意識の向上など地域の再生に貢献した。

本町でも都市住民との交流や特産品の開発等のまちづくり事業を展開する際に経営感覚や市場競争原理が働く体制が事業の発展や継続性の確保などの成功のポイントとなる。

 

(2) 自立を支援する行政との協働関係の確立

「日本1/0村おこし運動」は、集落の自治意識の高揚を目的に、行政(智頭町)がまちづくりの基本的な方向を示し、住民の自立支援のために専門家の派遣や助成を行う。行政の支援は集落内の合意形成が前提となっており、やる気のある集団に限られた資源を有効に投下するしくみとなっている。住民主導のまちづくりへの行政の側面的な支援は他の事例でも例外ではなく、「のどか村」でも行政(三郷町)はのどか村を公共的団体とみなし管理運営委託を可能とする条例を制定し、一定の受益者負担はあるものの農地造成や施設整備には各種補助事業を効果的に導入している。「黒壁」も法人化(第三セクター)に行政(長浜市)が約3割出資しており、経済的な支援のみならず、事業活動に公共性、地域振興の使命を持たせる役割を果たしている。

住民主導のまちづくりを実現するためには、まちづくりに対する情熱や危機意識など住民の思いを行政が上手に受け止め、特に事業の立ち上げ時には自立を支える人的、経済的な支援が不可欠である。一方行政の過度の関与は依存体質をもたらし、当事者意識と自己責任を欠いた運営が、利用者不在、赤字垂れ流しという悪循環につながる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION