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3] 来街者や空き店舖出店者との交流により市民意識が向上 〜「死民」から「市民」へ

黒壁ができる前の長浜市民は知り合いを地元に案内する時は隣町の彦根城を案内し、彦根プリンスで食事をするというのが一般的なパターンであったが、現在では黒壁界隈や商店街を散策し、既存の観光施設や市中の食文化を紹介するようになった。また空き店舗出店者の1/3は市外出身者で新しい感覚と事業意欲は新しい刺激を与え、市民の意識改革や、誇り意識の醸成など市民意識の向上をもたらした。

 

図表4-11 「しみん」の3層分類

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資料:(財)地方自治研究機構「地域政策研究第11号」:

「まちづくりとひとづくり」(株)黒壁代表取締役社長笹原司郎氏執筆論文より作成

 

(5) 本調査研究への示唆

1] オンリーワンのマーケティング志向で地域資源を創出

大規模小売店舗の進出により衰退した商店街の教訓から大資本では真似の出来ないもので、文明開化の香りを感じさせる建物の歴史性、町衆達の財力で400年の伝承継続した曳山祭りの文化芸術性、国際性豊かなものを世界から求めるという発想から、日本のガラスマーケットはまだまだ小さい事に着目し、長浜を日本のガラスのメッカにしようと「売る」「つくる」「みせる」ことを重視して技術導入、研究開発し、スタッフの留学など人材育成に注力した結果、本格的なガラスファンを集め、高いリピート率(44%)を得た。

2] 明確な経営哲学で商店街活性化、街並み保存を実現

安易な仕入れで全国どこにでもある物に長浜や黒壁の判を押して、一過性の観光客に売る土産屋が入ると長浜や黒壁の哲学が崩れてしまうという危機感のもとで、空き店舗に土産屋は一切入れず、大型店舗と棲み分けができるノウハウや技術、商品を持つ店を選別して空き店舗に入れるという信念を貫くことで商店街の活性化を実現した。

3] 来街者、新住民との交流で住民意識が向上〜死民から市民へ

空き店舗入居者の1/3は市外出身者で新しい考え方、感覚をもち、商売に強い意欲を持つ人の刺激を受け、市民がまちに誇り意識を持ち、市民意識の向上をもたらす結果となった。

 

 

 

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