日本財団 図書館


2. 法定外税の活用

平成11年度より、法定外税の課税も許容されることになり(地方税法(以下「法」という)731条以下)、従来に比べて法定外税の活用の可能性が広げられた。また、法定外普通税に関して、従来は財政需要と税源の所在が問題とされる法律構成になっていたが、それらがなくなったことにより、活用しやすくなった点も重要であろう。しかし、法の定める法定外税の消極要件をはじめ、非課税規定との関係その他検討を要する点が多く残されている(3)。

(1) 消極要件との関係

法は、法定外税について、総務大臣との事前協議とそれに基づく総務大臣の同意を得なければ課税できないものとしている。しかし、以下のいずれかの事由があると認める場合を除き、同意しなければならないとして(法262条、671条、733条)、総務大臣を拘束しようとしている。逆にいえば、いずれかの事由に該当する場合には、同意されない可能性が高いのであるから、これらを「消極要件」と呼ぶことができよう。この要件の解釈適用が今後問題とされるであろう。

1] 「国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ、住民の負担が著しく過重となること」(1号要件)

この消極要件において、単に「課税標準の同一」のみならず、「住民の負担が著しく過重となること」が上乗せされているので、法律上は、課税標準を同一にする税であっても、負担が過重とならない限りは、法定外税として許容されることになる。しかし、政治的には、国税・地方税を問わず、既存税目と重複する課税を採用することは躊躇されよう。後述の「国の経済施策」との抵触も問題とされる余地がある。

例えば、市町村が、その区域内にある不動産を取得した者に、「市町村不動産取得税」を課することができるであろうか。また、市町村が、その区域内にある土地・建物を相続により取得した個人に対して「不動産相続税」を課することができるであろうか。相続による不動産の取得について不動産取得税が非課税とされているなかで、市町村の「不動産相続税」を設けることは、後述の「国の経済施策」に照らして適当でないとされるかどうかの検討を要するという議論もありえないわけではないが、租税制度そのものを「経済施策」とみる必要はなく、したがって、理論上は、負担が過重とならない限り、許されるべきであると考えられる。その限りにおいて、国税の税目がすでに存在していても、税目に関する「先占」を生じ、法定外税の排除が許されるわけではない(国が、そうした法定外税が好ましくないと考えるならば、そうした税の採用を地方団体に禁止する法律を制定する途がある)。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION