外形標準課税の意義としては、地方分権を支える安定的な地方税源の確保、応益課税としての税の性格の明確化、税負担の公平性の確保等があげられているが、上述のメカニズムを通じて財政支出の抑制、合理化を促進する可能性について、より掘り下げた上で広く理解を得るよう努める必要があると思われる。
【参考:財政支出の下方硬直性】
公共選択の理論によれば、公共財の供給に関する意思決定と予算配分のプロセスは、有権者、政治家、官僚、利益団体等を巻き込んだ複雑な政治過程であり、各主体の私的利益の追求は、最も効率的な資源配分をもたらすよりは、財政規模を必要以上に大きくする傾向があるとされる。こうした現象の発生する理由としては
・公共財の便益と費用の関係が明確でなくなると、国民・住民のコスト意識が失われ、受益する人々が特定の公共財に対する過剰な要求を出しがちである。
・政治家が、特定の利益集団の代弁者として動くと、公共財に対する選好の情報が偏った形で政府に伝わる。
・官僚制内部においても、予算獲得を最大化する行動や、住民との摩擦の回避など、納税者の意思に基づかずに公共財の供給を増加させようとするメカニズムが存在する。
等が指摘されているが、特に、いったん予算化された歳出の削減に対しては、既得権から生じる利益を擁護するために、往々にして強い抵抗を引き起こすことが知られている。